大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2019年07月19日 | 植物

<2751> 大和の花 (849) コマツナギ (駒繋)                                         マメ科 コマツナギ属

              

 日当たりのよいやや乾燥した草地や川土手、道端などに生える草本状の小低木で、高さは30センチから90センチほどになる。よく分枝し、枝は緑色で、細いが、馬を繋いでも切れないほど丈夫であるということからこの名がついたという。葉は柄を有する奇数羽状複葉で、互生する。小葉は長さが1センチから1.5センチの長楕円形で、先は丸い。基部は心形で、縁に鋸歯はなく、7個から13個つく。枝や葉に伏毛が見える。

 花期は7月から9月ごろで、葉腋に長さが4センチから10センチの総状花序を出し、紅紫色の蝶形花をやや密につける。花は花序の下から咲き上がる。豆果の実は長さが3センチ弱の円筒形で、熟すと茶褐色になる。本州、四国、九州に分布し、国外では朝鮮半島、中国に見られるという。大和(奈良県)では各地に野生する。 写真はコマツナギ(明日香村)。     この一躯この現身にかかはるは時の雫か夢の欠片か

<2752> 大和の花 (850) ニワフジ (庭藤)                                            マメ科 コマツナギ属

             

 川岸の岩場や河原などに生える落葉小低木で、高さが30センチから90センチほどになる。葉は奇数羽状複葉で、小葉が7個から13個つく。小葉は長さが2.5センチから4センチの長楕円形もしくは狭卵形で、裏面は毛が生え、白色を帯びる。

 花期は5月から6月ごろで、葉腋に総状花序を出し、長さが1.5センチほどの紅紫色の蝶形花を多数つける。園芸種はよく庭などに植えられ、花がフジに似るのでこの名がある。別名イワフジ(巌藤)

 本州の中部地方と近畿地方、四国、九州に分布し、国外では中国と台湾に見られるという。大和(奈良県)では十津川村の北山川の流域で見かける。写真は川岸の岩場に生え出し、花を咲かせたニワフジ。未来とは未知にしてあり誰もみな向かひ行かねばならぬ領域

<2753> 大和の花 (851) エニシダ (金雀枝)                               マメ科 エニシダ属

                 

 南ヨーロッパ原産の落葉低木で、高さは2メートル前後になる。庭や公園などに観賞用として植栽されることが多いが、近年、道路の改修工事などで、法面の斜面などに植えられ、緑化と砂防に用いられ、山間でも見かけるようになった。葉はごく小さな3出複葉で、ときに小葉が1個のものも見られる。

 花期は4月から5月ごろで、弓状に垂れる前年枝の葉腋に長さが2センチほどの蝶形花を1個ずつつけ、枝木いっぱい溢れんばかりになる。花は全体が鮮やかな黄色で、よく目につく。翼弁に赤いぼかしが入るものはホオベニエニシダ(頬紅金雀枝)と呼ばれる。豆果の実は長さ5センチ前後で、秋、黒褐色に熟す。

 江戸時代の延宝年間(1673年から1680年)にオランダから渡来した帰化植物で、日本ではあまり馴染みがないが、原産地のヨーロッパではよく知られる低木で、花の観賞のみならず、各方面に用いられている。食用としてはつぼみを塩漬けにし、種子をコーヒー豆の代用とする。薬用としては腎臓や肝臓の病に。材は箒、屋根葺き、衣服、紙、染料など様々に用いられている。

 また、イギリスでは王家の紋章に用いられ、国章ともなっている。もっともよく知られているのは絵本などに登場する魔女が跨って空を飛ぶ箒がある。なお、エニシダの名はラテン語のゲニスタに由来すると言われる。金雀枝は漢名。 写真は黄色の花が鮮やかでよく目につくエニシダ(左・御杖村)、花のアップ(中・同)、山に春を呼ぶ花(右・上北山村)。      斯くはあり生きとし生けるものの常 時代を負ひてゆくほかになし

<2754> 大和の花 (852) アカシア (金合歓)                                          マメ科 アカシア属

           

 熱帯から亜熱帯に生えるアカシア属の総称で、このアカシアは世界に500種以上に及ぶと言われ、オーストラリアに多く、アフリカ、アラビヤ、アメリカなどにも見られるという。日本には自生せず、ミモザの名で知られるフサアカシアやギンヨウアカシアがよく知られ、これらのアカシアはみな帰化したものである。

  また、日本でアカシアと呼ばれているものに今一つハリエンジュのニセアカシアがある。これも帰化植物で、こちらの方が一般的であるが、ニセ(偽)と言われるように、ハリエンジュ属で、属を異にし、本来のアカシアではない。では、日本でよく見かけるアカシア属のフサアカシアとギンヨウアカシアを見てみよう。

  フサアカシア(ミモザ)は高さが10メートルから15メートルに及ぶ常緑高木で、ヨーロッパではミモザと呼ばれる。葉は長さが10センチから15センチの2回偶数羽状複葉で、羽片は10対から20対つき、羽片には緑白色の長さが5ミリほどの小葉が30対から40対つく。

  花期は2月から3月ごろで、枝先に鮮やかな黄色の小球形の頭状花序を総状に多数つけ、樹冠いっぱい溢れんばかりに咲く。花には芳香があり、庭木、切り花、香水の原料などに用いられる。実は長さが10センチ弱の豆果。

  ギンヨウアカシアは常緑小高木で、高さは5メートルから10メートルほどになる。葉は2回偶数羽状複葉で、羽片が3対から5対つき、羽片は長さが5センチから10センチで、線形の小さな小葉を8対から25対つける。小葉は緑白色で無毛。ギンヨウアカシアの名はこの葉の色による。また、葉が螺旋状に密に互生する特徴がある。

  花期は2月から4月ごろ。花は鮮やかな黄色で、フサアカシアによく似て、花弁は小さく、多数の雄しべが小球形を成し、目につく。豆果の実は5センチから12センチあり、中に出来る種子と種子の間がくびれる。本種もフサアカシアと同じく、庭木や切り花として用いられる。 写真はフサアカシア(左2枚)とギンヨウアカシア(右2枚)。多雨少雨たとへば雨も環境に如かず今年の梅雨の長さ

 

 

 

 


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