大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2014年12月30日 | 写詩・写歌・写俳

<1212> 今年の花

      一年の 花を閲して 年の暮れ

 今年も山野を歩いて幾つかの貴重な花に出会った。思い出しながら奈良県のレッドデータブックに照らし合わせてみると、以下のような草木の花が見られる。キンラン(金蘭)、ヘビノボラズ(蛇上らず)、オオミネコザクラ(大峰小桜)、ヒヨクソウ(比翼草)、オウギカズラ(扇葛)、クワガタソウ(鍬形草)、オノエラン(尾上蘭)、ミヤマウコギ(深山五加木)、ガガブタ(鏡蓋)、ヤマトミセバヤ(大和見せばや)等々。奈良県では希少種とされているものから絶滅寸前種とされているものまで、保護対象の花もある。

         

  調査結果によると、奈良県は全国的にも野生植物の豊富なところと認められているが、絶滅が心配されるレッドリストにあげられている草木も多く見られる。では、今年一年の間に出会った一つ一つの花について見てみたいと思う。写真上段は左からキンラン、ヘビノボラズ、オオミネコザクラ、ヒヨクソウ、オウギカズラ。写真下段は左からクワガタソウ、オノエラン、ミヤマウコギ、ガガブタ、ヤマトミセバヤ。

                  

 キンラン―――――――ラン科の多年草。山地や丘陵地の雑木林の林下に自生する。五月ごろ茎の上部に鮮黄色の花を数個から十個ほどつける。白い花を咲かせるギンラン(銀蘭)の仲間で、本州、四国、九州に分布し、奈良県では絶滅危惧種にあげられている。写真は明日香村での撮影。

  ヘビノボラズ――――――メギ科の落葉低木。湿地の周辺に生える特性がある。花は五月ごろで、黄色。果実は鮮紅色。枝に鋭い棘があり、蛇も登れない意によってこの名がある。撮影は奈良市の大和高原の池辺で。奈良県の生育地はこの一箇所のみと見られ、奈良県では絶滅寸前種にあげられている。

  オオミネコザクラ―――サクラソウ科の多年草。イワザクラの一種で、大峰、台高の紀伊山地の山岳高所にのみ見られる固有種である。ほとんど土の見られない岩場に自生し、五月に花冠が淡い紅紫色の花を咲かせる。撮影は大台ヶ原山。奈良県では個体数が極めて少なく、絶滅寸前種である。

 ヒヨクソウ――――――ゴマノハグサ科の多年草。草丈は大きいもので七十センチほど。葉腋から左右相称の花序を伸ばし、これを比翼と見なしこの名が生まれた。六、七月ごろ青紫色の花をつける。北海道南西部から本州、四国に分布し、山地の草地に自生、撮影は金剛山。奈良県では希少種。

 オウギカズラ―――――シソ科の多年草。草丈二十センチほど。荒い鋸歯が特徴の葉を対生し、上部の葉腋に淡紫色の唇形花を数個咲かせる。本州、四国、九州に分布し、山地の木陰に自生する。写真は金剛山の谷筋で見かけた群落の中の一つである。奈良県ではなかなか目に出来ない希少種である。

 クワガタソウ―――――ゴマノハグサ科の多年草。草丈は二十センチ前後。対生する卵形の葉を有し、五、六月ごろ、上部の葉腋に淡紅紫色に紅紫色の条がある花を咲かせる。本州の中部以西の太平洋側に分布し、奈良県では希少種。萼が残る果実を兜の鍬形に見立てての名である。

 オノエラン―――――ラン科の多年草。尾根の上に生えるランの意。二個の葉を持ち、その根本から十五センチほどの花茎を伸ばし、真夏のころ、唇弁に黄色いW形の斑紋がある白い花を数個咲かせる。紀伊半島と中部地方以北に分布し、奈良県では大峰、台高山系に見られるが、絶滅寸前種である。

 ミヤマウコギ――――ウコギ科の落葉低木。高さは二メートルほど。掌状複葉の葉を持つ。雌雄別株で、六月ごろ、枝先に散形花序を出し、小さな黄緑色の花をつける。本州の関東から近畿と四国に分布。奈良県では絶滅危惧種である。その名にミヤマ(深山)とあるが、金剛山の登山道で撮影。

 ガガブタ―――――――リンドウ科の多年生水草。本州、四国、九州に分布し、浅い池や沼に生える。ひげ根を水底の泥中に下ろし、卵状楕円形の葉を水面に浮かべ、葉腋から花茎を伸ばし、七月から九月ごろにかけて水面に中心部が黄色の白い花を咲かせる。写真は大和郡山市で撮影したが、植栽起源かも知れない。奈良県では絶滅寸前種。

 ヤマトミセバヤ――――ベンケイソウ科の多年草。山地の岩崖地に生える。花が美しいので「見せよう」という意による。ヤマトは大和で、この花はミセバヤの中でも大和地方のみに見られる種として保護が呼びかけられている。奈良県でも川上村の一箇所のみにしか見られないとされている絶滅寸前種である。

 


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