大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2014年12月29日 | 写詩・写歌・写俳

<1211> この世の風景  (3)

      物事を真理に於いて捉へるに あるは神話の時代の理想

  [追記] これは、このブログ「<503>男綱・女綱に思う」に触れているところであるが、天心が言う「真理」における相対なる存在のまたの例は、古来より知覚され述べられている。所謂、『古事記』の神話に見られるところ、その神話は凸と凹、即ち、相対する凸凹をもってある「真理」としての国生みの物語が語られている。

  凸をもって凹に差し、凹をもって凸を受け止め、補完することによって正四角形は成り立つが、天心の言葉によれば、凸と凹は授と受に等しく、男と女(雄と雌)の関係に同じで、正四角形は凸と凹によって成るところの「真理」を言うものにほかならない。『古事記』は、即ち、これをもって国生みの物語をなさしめている。言わば、『古事記』の神話は天心が言うところの「真理」の一面をもって日本の国土形成の物語を作り上げているのである。

  つまり、『古事記』の神話は男神である伊邪那岐命と女神である伊邪那美命の合体(結婚)によって日本国が生まれたとする。『古事記』の記事を見ると、「此の吾が身の成り余れる処を以ちて、汝が身の成り合はざる処にさし塞ぎて、国土(くに)を生み成さむと以為(おも)ふ」とある。言わば、これは神と国土を最も身近な人体に擬えてその「真理」を言っているということがわかる。

             

  なお、『古事記』の神話は、国を治める条において、昼を司る天照大御神と夜を司る月読命、それに海を司る建速須佐之男命の三神の誕生を言祝ぎ、この三神によって欠くことなく国を治めることが出来ると考えた。これは中国の陰陽思想に習うものと言われるが、昼と夜の相対にあって、昼を天照、夜を月読に任せて国を治めるという考えによるもので、この神話では、これに日本が周囲を海に囲まれた島国ゆえに、海を守る須佐男をその任に当てることに考えが及んだ。神話における日本国の形成はこの三神によって達せられると『古事記』の制作者は見たわけであるが、この三神にも天心の「真理」ということが思われて来るところである。

  その後、『古事記』の神話は海を司る任にあった須佐男が狼藉を働いたために天界から追放され、出雲の国に降り立ち、天地の地を司る神になることが語られている。そして、『古事記』の神話においては、天を支配する天津系の天照に対し、地を支配する国津系の須佐男によって日本国は治められるという筋立てが出来上がってゆくことになる。ここにも天と地という相対が見られ、天と地をもって日本の国が成り立ち行くという天心の言う「真理」の面がうかがえるのである。加えて言えば、天の天照は女神であり、地の須佐男は男神で、これにも男女という相対が見られ、日本国を「真理」と見て取る考えがうかがえる次第である。

  「真理」とは宇宙の法則に適うところ、バランスされた自然の姿にあると言ってよかろう。バランスされた自然の姿は穏やかで、国が穏やかに治められることを理想としたことがこの『古事記』の神話の物語からはうかがえる。この「真理」は現天皇の紋章である日月紋にも表されている。つまり、日月は昼と夜、即ち、陽と陰の相対にあるもの。天皇の日月紋は『古事記』の神話における天照大御神と月読命の男女二神(両性)の合体を意味するもので、天心が指摘する「真理」に合致するところがそこには表象されていると見なせる。言わば、天皇の日月紋には天皇が昼も夜も我が国すべてを統べ司る精神性を示すものと考えられるのである。

  『古事記』の三神の話に戻れば、この神話では、昼と夜の両方を統べ司ることによって国を治め、外からの守りをこれに加え、完璧を期したわけである。そこには天心の「真理」の考えが基にあることが見て取れるという次第である。  写真左は、日が差せば、影の出来る相対なる現象で、この現象は「真理」を考えるのに一つのヒントを与えてくれる。 写真右は花と蝶。これは授と受の間柄を示す自然の姿の一端である。    ~ 終わり ~

 


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