大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2019年11月26日 | 植物

<2879>  大和の花 (945) カキノキ (柿の木)                                  カキノキ科 カキノキ属

          

 中国原産で、古くから栽培され、日本にも渡来したと考えられている落葉高木で、10メートルほどの高さになる。樹皮は灰褐色で、成木になると、縦に裂けて剥がれる。葉は長さが7センチから15センチの広楕円形で、先は短く尖り、縁に鋸歯はなく、やや光沢があり、秋の紅(黄)葉が美しい。

 雌雄同株で、花期は5月から6月ごろ。新枝の葉腋に淡黄色の花をつける。雄花は直径1センチ弱の鐘形で、先が4裂し、裂片の先は反り、雄しべは16個ある。雌花は雄花より一回り大きく、広鐘形で、裂片は反り返り、雌しべ1個が目につく。また、雌花には印象的な大きな萼片が4個取り巻き、実になっても残る。

  実は液果で、秋になると、橙赤色に熟す。甘柿と渋柿に大別されるが、多くの品種が栽培されている。カキの実は日本が誇る果物の1つで、大和(奈良県)は隣りの和歌山県とともにカキの一大産地として知られ、大和が発祥の御所柿や刀根早生は有名。奈良県には五條市にカキの博物館があるほどで、カキの生産に力を入れている一面がうかがえる。

  近隣の里山にはカキノキが点在し、ヤマガキと言われるが、栽培していたものが野生化したものか、自生のものかははっきりしない。ほかにも実が小さいマメガキ(豆柿)の類がある。カキ(柿)の名は、赤い実がなるアカキのアを略したものなど、その由来には諸説ある。

  実は完全甘柿、不完全甘柿、完全渋柿、不完全渋柿などに多くの品種が見られ、渋柿の場合は渋抜きをするか干し柿にして食べる。渋柿から採れる柿渋は渋紙や雨合羽、塗料などに用いられる。材は堅く緻密で、珍重される。薬用としても知られ、へたを漢方では柿帯(してい)と呼び、夜尿症などに、また、柿渋はしもやけに効能があり、葉は柿の葉茶として用い、止血、血圧降下によいと言われる。大和地方にはカキの葉で握りの寿司を包む特産の柿の葉寿司がある。

  日本には奈良時代に中国から渡来したとされるが、記紀や『万葉集』など古文献に登場しないので奈良時代にはなかったという一方、万葉歌人柿本人麻呂に柿の字が見えることから当時すでにカキノキはあったという見方もある。カキノキは身近な木であるため、例えば、「カキノキから落ちると死ぬ」といった俗信が各地にある。これは枝木が折れやすいことへの注意喚起で言われたのではないか。また、熟れた赤い実を1つだけ残す木守柿の風習があるが、これは日本的精神性の現われと見なせる。  写真はカキノキ。左から雄花、雌花、熟した実を啄むヒヨドリなどの野鳥、里山で実をならせるヤマガキ。 吊し柿売らるる風情法隆寺

 


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