大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2019年11月27日 | 植物

<2880>  大和の花 (946) イチョウ (公孫樹・銀杏)                                 イチョウ科 イチョウ属

              

 中国原産とされ、中生代ジュラ紀(約1億9千万年前)の生き残りとして知られる1科1属1種の落葉高木で、高さは30メートルにも及び、巨樹古木が見られ、老木になるとしばしば乳と呼ばれる気根の一種が出来る。樹皮は灰白色で、縦に裂け、コルク層が発達するので弾力がある。枝は長枝と短枝がある。葉は幅が5センチから7センチの扇形で、両面とも無毛。ときに切れ込みの入るタイプも見られる。長い柄を有し、長枝では互生、短枝では輪生状につく。

  イチョウは雌雄異株裸子植物で、花期は4月から5月ごろ。葉の展開とほぼ同時に開花する。雌雄とも短枝の葉腋に束生し、雄花は長さが2センチほどの円柱形で、多数つき、雌花は細長い柄の先に剥き出しの胚珠が1、2個つく。風で運ばれる花粉が胚珠の花粉室に取り込まれ、発芽して精子が出来る。精子は秋口に放出され、卵細胞を受精し、実になる。

  このとき、種子を葉につける現象が起きる個体があり、お葉つきイチョウと呼ばれ、この現象は植物の系統的深化発生を示すもので学術研究の資料として極めて貴重な存在であるとされている。実(種子)は晩秋のころ熟し、外種皮が黄色を帯び、悪臭があって、皮膚にふれるとかぶれる。中種皮は白く堅い核果で、銀杏(ぎんなん)と呼ぶ。

  黄葉が美しく、街路樹や公園樹として植えられ、各地に見られる。大和(奈良県)では古社寺に関わる巨樹古木が多く、『奈良の巨樹たち』(グリーンあすなら編)にも桜井市素戔雄神社の初瀬の大イチョウ(推定樹齢600年)や同市音羽観音寺のお葉つきイチョウ(推定樹齢500年、県の天然記念物)をはじめ、御所市の一言主神社、宇陀市の戒長寺、同市下田口水分神社、御杖村の土屋原春日神社、広陵町の弁財天社、下市町の広橋観音堂、五條市の和田丹生神社、天川村の坪の内来迎院などのイチョウがあげられている。天理市内のイチョウ並木の街路樹はよく知られ、奈良公園一帯にも巨樹や古木を誇るイチョウが見られ、黄葉の時期には一段と映える。

 日本への渡来は室町時代ではないかと言われるが、はっきりとしていない。社寺にイチョウの巨樹や古木が多いのは、中国への留学僧が持ち帰ったことに由来するとの説があるが、社寺を象徴する威厳がイチヨウ自体に具わっているからと言えそうである。材は軟らかく、緻密で、艶があり、天井板や床板、将棋、囲碁盤、将棋の駒、算盤玉などに用いられる。銀杏は茶碗蒸しに欠かせない食材であるが、多食すると中毒を起こすので要注意である。

 なお、イチョウの名の由来には諸説あるが、葉がカモの脚に似ているので、鴨脚(おうきゃく)とも書かれ、これを中国語で「ヤァチャオ」と読み、これがイチョウになったというのがもっともらしい。銀杏(ぎんなん)の名は唐宋音の「ギンアン」が転じたものと言われる。よく知られるイチョウの紋所は扇形の葉が形象化されたもので、室町時代に家紋として定着した。因みに東京大学のイチョウのバッジは学生からの応募によるもので、校庭のイチョウがモチーフと言われる。 写真はイチョウ。左から雄花、枝の実、お葉つきイチョウ、黄葉。  大銀杏天下の黄葉下の眼


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