仙台の大学ではで水産学(趣味の延長)を学んでいた。研究室には、大きな池があり、井戸水がふんだんに使えた。いたずらで色々な魚の種苗生産をこっそりやっていた。モツゴ、タモロコ、錦鯉、金魚、マブナそしてへら鮒。錦鯉は新潟県の水産試験場から日本一になった錦鯉の受精卵を送ってもらったこともあった。また、色々な魚を飼っていた。ヤマメ、ニジマス、草魚、青魚、そして、へらとコイの合いの子等々。へら鮒の種苗は、1t程のパンライト水槽に地下水を掛け流して飼っていた。生まれた時から数日おきに解剖し、腸の発達状況を金魚と比較観察してスケッチしていた。へら鮒は、生まれたては、金魚やマブナの腸と変わりないが、成長に伴い腸が伸び、腹腔内で複雑に折れ曲がっていく。最終的には、金魚やマブナの3倍ほどの長さになるが、これは、食性によるもので植物性の物を消化するために動物食・雑食性の魚類よりも腸が長くなるのだ。
へらの子は1年間世話したが、結局、人間には慣れなかった。マブナや金魚、鯉は、人の姿を見ると「餌をくれ」と、一斉に水面に顔を出すが、へらは、全くこのような行動をとらない。配合飼料を与えても、全く無視し、しばらくして忘れた頃に、水槽の底で溶けかかった餌を少しずつついばむという感じだ。だから、飼っていてもちっとも可愛くないのだ。
それでも1年飼育すると少し大きくなり、どこか、へらのまだ入っていない池に放流したくなった。結局、仙台市郊外の丸田沢溜池に放流することにした。数個のビニール袋に魚と酸素を詰めて運搬、放流し、放流の記念写真を撮った。当時、丸田沢では、釣台を構え、へらの格好で釣りをしている釣師を見かけることがあったが、へらは生息していなかった。何故それが分かったかというと、春先のハタキの最中に地引き網を引いたことがあるからだ(勝手に網を引いてはいけません!!)。網に入ったのは、見事に全てマブナだった。
現在、丸田沢がどうなっているか分からないが、へらが生息しているとすれば、私が放流したへらの末裔かもしれない。あれから、30年近く経った。丸田沢にへらがいるかどうか誰か教えて欲しい!