高尾山へ参道から登る途中、薬王院の手前に男坂と女坂のふたつのルートがあります。男坂は坂と言っても108段の急な階段。女坂はゆるやかなカーブが続く坂道。ある日、高尾山を目指して男坂に差し掛かった時、幼稚園生くらいの男の子が階段の数を大きな声で数えながら上っていました。するとその子のおばあちゃんと思しき人が「声を出して数えちゃダメだよ」と声を掛けていました。一瞬、「なぜダメなのだろう」といぶかしく思いましたが、おそらくこういうことではないでしょうか。階段が何段あるか数えながら上っている人はほかにも居る、そこに「36、37、38・・・」と数え上げる声が聞こえたら、落語の時そばみたいに自分が数えていた数が分からなくなるのではないか、そんな迷惑を掛けないために声を出さずにココロで数える方が良いだろう、おばあちゃんにはこのような考えがあったのだろうと想像しました。いまどき、ここまでの気遣いをする人がいたのかと少し驚き、また感心しました。一所懸命に階段を上っている男の子には、そんな気配りのココロを受け継いで欲しいと思う一方、元気いっぱいに声を出しながら歩くハツラツさを持って欲しいとも思いました。仮に気配りと元気いっぱい、どちらかを選べと言われたら、この選択は、男坂を行くか、女坂を行くかの選択よりも難しそうです。
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