shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ABBA -The First Ten Years-

2009-03-01 | Rock & Pops (70's)
 そのヒット曲の多さからアバはシングル・マーケット向けのポップ・アーティストと見なされる傾向がある。確かに彼らのシングル曲のヒット・ポテンシャルはとてつもなく高いし、そんなハイ・クオリティーなシングル・ヒットを連発できる作曲能力の高さも群を抜いている。だからといって「アバはベスト盤1枚あればそれで十分」なんだろうか?
 私は彼らが活動していた73年~82年までの10年間を3つの時期に区切って考えている。まずはデビューから「ダンシング・クイーン」で世界的にブレイクするまでの「前期」、3分前後という比較的短い曲が多く、どの曲もシンプルで親しみやすいメロディーに溢れており、まるで60年代前半の一番美しかった頃のビーチ・ボーイズ・サウンドを北欧風ガールズ・ポップとして70年代に再現したような楽しさだ。「リング・リング」、「ウォータールー」、「ソー・ロング」、「アイ・ドゥー・アイ・ドゥー・アイ・ドゥー」、「SOS」、「ママ・ミア」、「フェルナンド」と、よくぞまあこんなにキャッチーなメロディーが次から次へと浮かんでくるものだと感心する。尚、どのベスト盤の選曲からも漏れているようだが、サード・アルバム収録の「バング・ア・ブーメラン」は聴く者をウキウキした気分にしてくれる隠れ名曲なので要チェックだ。
 「ダンシング・クイーン」の大ヒット以降、世界各国のヒット・チャートを席巻し続けた76年~79年の「中期」、よりスケールアップし実に巧みに計算された楽曲構成には一流アーティストとしての風格すら漂う。「きらめきの序曲」、「テイク・ア・チャンス・オン・ミー」、「サマー・ナイト・シティ」(←この曲めっちゃ好き!)、「チキチータ」といったシングル曲以外にも「マネー・マネー・マネー」や「ダズ・ユア・マザー・ノウ」といった名曲が並ぶ。それと、この盤には入っていないが中期の隠れ名曲の筆頭として「ザッツ・ミー」を大推薦!これぞ3分間ポップスの極みと声を大にして言いたくなるような珠玉のメロディーの奔流が圧巻だ。絵に描いたようなアバ・ミュージック「エンジェルアイズ」やシングルとしては異例の6分近い大作「イーグル」の重厚なサウンドも忘れがたい。又、「ヴーレ・ヴー」や「ギミー・ギミー・ギミー」のようにビートを強調したダンサブルな楽曲群を「ヨーロピアン・ディスコ・ミュージック」と呼ぶ向きもあるが、シンセを大胆に導入しながらも決して人間的な温かみを失わないサウンドは他の凡百のディスコ・ミュージックとは似て非なるもので、様々なスタイルをこなせるアバの懐の深さを示しているにすぎない。とにかくこの中期でアバはポップ/ロック/ダンスミュージックで出来ることはすべてやり尽くしたような気がする。
 80年代に入って明らかにアバのサウンドに変化がみられた「後期」、特に80年にリリースされた大傑作アルバム「スーパー・トゥルーパー」には完全KOされた。これまでのいわゆる“ポップス”を予想していた私の耳に飛び込んできたのは実に洗練された“大人の”サウンドで、スタンダード・ソングも裸足で逃げ出す「ザ・ウィナー・テイクス・イット・オール」のドラマチックな展開は何度聴いても感動するし、品格滴り落ちる「スーパー・トゥルーパー」の美しいコーラス・ハーモニーは筆舌に尽くしがたい素晴らしさだ。この時期の隠れ名曲としては後年イレイジャーがカヴァーしてヒットした「レイ・オール・ユア・ラヴ・オン・ミー」がダントツに素晴らしいのだが、この哀愁舞い散る名曲を惜しげもなくシングルB面にしてしまうのだから凄いとしか言いようがない。
 話題沸騰のミュージカル映画「マンマ・ミーア」の影響で世間はアバのリバイバル・ブームで盛り上がっている。リアルタイムでアバを経験した人もそうでない人も改めて彼らの音楽に触れ、その素晴らしさを実感している。“本物”の音楽は何十年経ってもその輝きを失わない。今回のブーム再燃がそのことを如実に証明している。映画を見、サントラ盤を聴いたら次は8枚のオリジナル・アルバムである。ベスト盤から漏れたキラ星のような隠れ名曲たちにきっと出会えると思う。

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