shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ブギの女王 / 笠置シヅ子

2009-01-12 | 昭和歌謡
 最近笠置シヅ子にハマッている。ど~せ古い歌謡曲やろ、などと侮ってはいけない。様々な音楽を聴いてきた今の耳で聴いてもそのスインギーでパンチのある歌声は風化するどころかより一層の輝きを放っている。彼女は「ブギの女王」と呼ばれ、敗戦直後の1940年代後半から50年代にかけて国民的人気を誇った歌手である。「青い山脈」や「銀座カンカン娘」といった名曲を次々と生み出した服部良一のプロデュースの下、そのエネルギッシュな歌唱とスイング感溢れる激しい身体の動きで敗戦で意気消沈していた人々の心を癒し、勇気づけたという。あの美空ひばりや江利チエミといった大歌手たちがリスペクトしてやまない、昭和歌謡の源流とでもいうべき偉大なシンガーなのだ。
 しかし私が彼女を聴くのはそういった「歴史聴き」をするためではない。ただ単に彼女の歌がめちゃくちゃ面白いから聴いているのだ。鼻歌で歌えそうな覚え易いメロディーとウキウキするようなリズムに乗せて、ヘタなお笑いよりも遥かに面白い歌詞が炸裂する。そこには凡百の J-POP が束になっても敵わないエネルギーが充満している。そんな彼女の残した数々の名唱の中でも特に私が好きなのが「買物ブギー」である。
 この曲、当時の大阪のおばちゃんの日常を面白おかしく綴ったコミカルな歌詞がめちゃくちゃ楽しく、何度聴いても心がウキウキしてくる。「おっさん、おっさん、これなんぼ?」「アホかいな!」とコテコテの大阪弁で暴れまわるところなんかもう最高(^o^)丿 しかも「たいに ひらめに かつおに まぐろに ぶりにさば」「とり貝 赤貝 たこにいか えびに あなごに きすにしゃこ」とまるで早口言葉のように言葉数の多い歌詞を、新しいリズムに乗って今でいうラップのような言葉の速射砲で難なく歌いこなす彼女の技量にはもう参りましたというしかない。まさに日本で最初の「和製ラッパー」である。
 ただひとつ残念なのは、現在入手可能なすべての CD 音源で後半の歌詞の一部がカットされていること。「わしゃ つんぼで聞こえまへん」の部分がレコード会社の自主規制とやらにひっかかり、「つんぼで」を丸ごとカットして前後を無理やりつないでいるため非常に不自然に聞こえるのだ。何もそこまでやらなくてもと思うが、しかし幸いなことに下にアップした映像ではオリジナルの完璧なヴァージョンが聴ける(ゲシュタポみたいな連中に削除される前にダウンロードしましょう!)のがありがたい。
 彼女の吹き込みをほぼ網羅したこの3枚組CDには他にも傑作が目白押しで、彼女をというよりむしろあの時代を代表する屈指の名曲「東京ブギウギ」、和製ジャンプ・ミュージックの原点ともいえる「ヘイヘイブギー」、抜群のスイング感がめちゃくちゃカッコイイ「ラッパと娘」、買い物ブギーと双璧をなすようなコテコテぶりに大爆笑の「たのんまっせ」、アメリカ生まれのブギウギを無理やり村祭りのやぐらの上に乗せてインターナショナル盆踊り大会にしてしまう「博多ブギウギ」、オモロうてやがて哀しき「めんどりブルース」、彼女が最高のジャズ・シンガーでもあることを証明した「大阪ブギウギ」、あのスタンダード・ソング「オールド・マン・リヴァー」に張り手を食らわせ倒れた顔面に和製ブギをぶち込んだような「オールマン・リバップ」と、まさに宝の山である。ただ、題名が「○○ブギー」とか「○○ブギウギ」とか似たものが多くて紛らわしく、あれを聴くやら、これを聴くやら、それがごっちゃになりまして、わてほんまによういわんわ~♪

笠置シズ子 買物ブギ Shizuko KASAGI,1950 高画質
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