shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ベスト・オブ・ジリオラ・チンクェッティ

2009-01-06 | European Pops
 ジリオラ・チンクェッティは60年代にカンツォーネを日本で大流行させたイタリアの歌姫である。彼女は清純派の美人シンガーで、ヨーロッパはもちろんのこと、ここ日本やアルゼンチンでも根強い人気を誇っている。彼女の一番の魅力は何と言っても母性で優しく包み込むようなその歌声にある。私の知る限りオーラ以前にオーラのような声はなく、オーラのように歌った歌手はいなかった。更に彼女はヴァラエティーに富んだ楽曲にも恵まれていた。トヨタのCMでもすっかりおなじみの①「雨」は69年のサンレモ音楽祭であのフランス・ギャルとデュエットした彼女の代表曲。マイナー調のイントロから入り、「イョ~ ノカンビョマァ~イ♪」からメジャーに転調、「ラ~ピョ~ジャ~♪」で一気にたたみかける曲想も素晴らしい!この曲は当時日本全国の運動会で行進曲になったとどこかで読んだ記憶があるが、CMに行進曲にと引っ張りだことはきっと日本人の心を惹きつける何かがあるのだろう。弘田三枝子のカヴァーでも知られる②「ナポリは恋人」は覚えやすいメロディーを持った美しい曲。彼女の伸びやかなヴォーカルがすーっと心に染み入ってくる。④「ローザ・ネーラ」は風雲急を告げるようなイントロから彼女の切羽詰ったようなヴォーカルが滑りこんでくる瞬間がたまらない。見事な感情表現をみせる彼女の歌声と、いかにもイタリアらしいノーテンキなサビのコーラスが生み出すコントラストも絶妙だ。竹内まりやがアルバム「ロングタイム・フェイヴァリッツ」でカヴァーした⑥「夢みる想い」はオーラの日本でのデビュー・シングルで、64年のサンレモ音楽祭やユーロヴィジョン・コンテストといったヨーロッパの賞を総ナメにした名曲。高貴な雰囲気を醸し出すピアノのイントロに続いてオーラが「ノノレタァ~♪」と歌いだすとまるで心が洗われるような清々しい気持ちになる。彼女本来の持ち味はこういった「歌い上げる」タイプの曲で最大限に発揮されるということがよくわかる名唱だ。曲調が二転三転する⑦「消え去る想い」では緩急自在という言葉がピッタリのヴォーカルを披露、カンツォーネ・シンガーとしての実力を見せつける。シルヴィー・ヴァルタンやミーナもカヴァーした⑩「ズン・ズン・ズン」はマーチ風の楽しげな曲で、オーラも元気一杯で弾けるようなヴォーカルを聴かせてくれる。⑪「花咲く丘に涙して」はウィルマ・ゴイク65年のヒット曲をカヴァーしたもので、オーラの囁くような歌声がたまらない。緊張感溢れるキーボードのイントロが印象的な⑫「つばめのように」は彼女の持ち歌の中で私が一番好きな曲で、GSを彷彿とさせるマイナーなメロディーのアメアラレ攻撃に涙ちょちょぎれる。イタリア版ブルーシャトウみたいな曲だ。⑬「薔薇のことづけ」はアップテンポに転じた0分48秒の所から徐々に盛り上げていって2分50秒の「オ~ ロ~ゼ ロゼ♪」で一気にクライマックスにもっていく壮大な曲想に圧倒される。こんなに素晴らしいシンガーなのに現在入手可能なCDがベスト物だけとは淋しい限りだ。入手困難なオリジナル・アルバムのCD化を切に望みたい。

ジリオラ・チンクエッティ la pioggia(雨) Gigliola Cinquetti
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