shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

TIME / ELO

2009-01-19 | Rock & Pops (80's)
 ジェフ・リンはビートルズ・ファンにとって、例えて言うなら大親分であるビートルズの忠実なる舎弟頭、つまりオジキみたいな存在である。だから彼が87年に「クラウド・ナイン」をプロデュースしてジョージの復活に貢献した時も、ビートルズ・アンソロジー・プロジェクトに共同プロデューサーとして参加し、「リアル・ラヴ」のビデオクリップに登場した時も、諸手を上げて歓迎した。彼は堅気の世界で言えば親戚のオッチャン... つまり身内同然なのだ。「ビートルズ解散後のビートルズ」とか「もう一人のポール・マッカートニー」といわれるジェフ・リン... ジョージ・マーティン引退後、ビートルズ関係のプロデュースやリマスターを任せられるのは彼しかいないとさえ思う。80's半ば以降はプロデューサー業が多忙を極めているが、元々はエレクトリック・ライト・オーケストラ、通称ELOのリーダーだった人である。ELOは71年~86年の間に11枚のアルバムを出しており、ストリングスを大胆にフィーチャーしてロックにクラシックの要素を導入した前期、ファンタジックでメロディアスなポップス主体のサウンドでELOが最もELOらしかった時代といわれる中期、ビートを強調した親しみやすいポップ調のロックンロール・スタイルへと移行した後期に分けられる。世評が高いのは中期らしいが、私の耳にはまだ何か中途半端なポップさに思えてイマイチのめり込めない。ストリングスを排し、大巾にギター・サウンドを導入したビートリィな、特に「サージェント・ペパーズ」から「マジカル・ミステリー・ツアー」の頃のビートルズ色が濃厚な後期ELOのサウンドこそが最高なのだ。多分「ターン・トゥ・ストーン」とそれに続く「ドント・ブリング・ミー・ダウン」の大ヒットがきっかけになって彼の中に息づいていたビートルズ魂が覚醒したのだと思う。あとはそれを全開にすればいいだけの話だった。そして出来上がったのが後期ELO3部作の第1弾にあたる「タイム」というわけだ。これぞまさしくジェフ・リンの音楽性の集大成といえそうな入魂の大傑作!1stシングル⑫「ホールド・オン・タイト」を初めて聴いた時は、「ファンタジック・ポップンロール」とでも呼べそうな軽快でノリの良いサウンドにぶっ飛んでしまった。専売特許といえるウキウキするようなコーラス・ハーモニーやベヴ・ベヴァンのパワフルに炸裂するドラミングも必殺にして完璧、ジェフ・リンが目指した究極のELOサウンドがここにある。2ndシングル②「トワイライト」はポップでスペイシーな音世界が眼前に広がるような、デジタル・テクノロジーを駆使した完成度の高さが圧巻だ。機械的なサウンドでありながら人間的な温かみを上手く表現した③「ユアーズ・トゥルーリー 2095」、何となく懐かしい雰囲気を感じさせる⑤「ザ・ウェイ・ライフス・メント・トゥ・ビー」、一切の無駄を削ぎ落としたかのような⑧「フロム・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド」、夢に溢れたサウンド・トリップを感じさせてくれる⑩「ヒア・イズ・ザ・ニューズ」と、これはもう完全無欠のポップ・アルバムという他ない。彼はこの後「シークレット・メッセージ」、「バランス・オブ・パワー」と前人未到のポップス道を突き進んでゆくのだが、それはまた、別の話...

Electric Light Orchestra - Hold on Tight