shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Chiemi Sings / 江利チエミ

2008-10-20 | 昭和歌謡
 少し前までは江利チエミといっても「昔テネシーワルツをヒットさせた歌手で、高倉健の元嫁さん」、という程度の認識しかなかった。ある時HMVのサイトでたまたまこの「チエミ・シングス」というCDを聴いてブッ飛んだ。何なん、この強烈なスイング感は!①のCrazy Rhythm 、いきなりブラッシュの乱れ打ちで始まりチエミのスキャットが炸裂する。お師匠さんのカール・ジョーンズとのデュエット(もちろん英語)ながら一歩も引かない、っちゅーかむしろ彼女の方がリードしながらグイグイと引っ張っていく。バックは白木秀雄クインテット... バリバリのジャズである。②のHow High The Moon も凄い。声も歌い方もまるで40年代半ばのジューン・クリスティーそっくり。途中のスキャット部分では、とても日本人とは思えないグルーヴィーなノリに圧倒される。1953年の録音... ってベツレヘムでクリス・コナーが、ヴァーヴでアニタ・オデイが傑作を連発する少し前に日本にこんなジャジーな女性ヴォーカル盤が存在したなんてまさに驚きだ。⑬のThe Naughty Lady Of Shady Lane では英詞と日本語詞を織り交ぜながら歌詞が物語風に進む(「ウスクダラ」でも同じ手法が取られた)のが面白いし、ラストのセリフ部分もめちゃくちゃ愉しい。ここには今の音楽が忘れてしまった「親しみやすさ」や「分かりやすさ」が満ち溢れている。⑱のCarioca、彼女の代表曲のひとつであるこの曲、ここに入ってるのは東京キューバンボーイズをバックに歌ったステレオ・ヴァージョン。確かに彼女の正確無比なスキャットは絶品なんやけど、一体どこで録音したのか残響音がキツすぎるのが残念。やっぱり63年にカウントベイシー・オーケストラの日本公演で競演した際のライヴ・ヴァージョンが最強でしょ。スタジオ・ヴァージョンよりもさらに速いテンポで飛ばすチエミとベイシー・オーケストラのスピード感が実にスリリングなこのヴァージョン、YouTubeにもアップされとったので興味のある方はどうぞ。⑲のI Get A Kick Out Of You でもシャープス&フラッツをバックにスイングしまくり、とってもカッコイイジャズに仕上がっている。やっぱり音楽は聴いてみないと分からない。「素晴らしいジャズ・ヴォーカリストとしての江利チエミ」と出会えてホントにラッキーだ。

キャリオカ Carioca