shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

It's All Right With Me / Sara Lazarus

2008-10-30 | Gypsy Swing
 ヴォーカル入りのマヌーシュ・スウィング盤は珍しい。数曲だけヴォーカルが特別参加というのはたまに見かけるが、ヴォーカリスト名義の作品のバックをジプシー・サウンドで、というのは滅多にない。しかもそのギタリストが天下のビレリ・ラグレーン、それもジプシー・プロジェクトでの参加となると、これはエライこっちゃである。サラ・ラザラスは94年のモンク・コンペでも優勝した実力派ヴォーカリストでここでもユニークな歌声を聞かせているが、やはりこの盤はビレリ・ラグレーンを聴くためにあると言っても過言ではないだろう。①のGypsy In My Soul... 何という素晴らしいバッキングだろう!音楽を知り尽くしたその道の達人のみが成し得る肩の力の抜けたプレイ。ちょうど「アニタ・シングズ・ザ・モスト」のオスカーピーターソンみたいな感じである。その盤でアニタも歌っていた②のTaking A Chance On Love、こちらはテンポをやや落としてじっくりと聞かせるが、ここでもビレリの細かいワザがキラリと光る。彼は速弾きだけの凡百ギタリストとは次元が違うのだ。アップテンポの③What A Little Moonlight Can Do では歌心溢れるソロを連発、ウィズストリングスの④で十分休憩を取った後(笑)、⑤のIt’s All Right With Me で再び大爆発(≧▽≦) この曲のテンポ設定はマヌーシュ・スウィングにとって理想的なのかもしれない。いや、もうここまでくるとマヌーシュとかジャズとかは関係なしに、ただ「素晴らしい音楽」でいいのではないか。そう思わせるぐらいこのヴァージョンは優れている。続くスロー・バラッドの⑥Dans Mon Ikeではサラにそっと寄り添うようなプリティなプレイを聞かせ、ミディアムで気持ち良さそうにスウィングする⑦Deed I Do やノリノリの⑧Down With Loveでも絶妙なオブリガートでサラをサポートする。そして①と並ぶこの盤のベスト・トラックとでもいうべき⑩The Way You Look Tonight... この曲でのビレリは持てるテクニックの限りを尽くしてバッキングの妙を聞かせてくれる。そのギターのイントロを聴いただけで、これから素晴らしい音楽が始まる予感が高まる。暖かく厚みのあるギターの音色と抜群のスイング感に身をゆだねる心地良さ... 汲めども尽きぬ泉のように湧き出る柔軟なフレーズの波状攻撃が圧巻だ。疲れていてもこれを聴くと「よっしゃ、頑張るぞ~!」という元気な気持ちにさせてくれる、まるでユンケルみたいな盤である。

Sara Lazarus with Bireli Lagrene's Gipsy Project

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