shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Physical Graffiti / Led Zeppelin

2008-10-18 | Led Zeppelin
 レッド・ゼッペリンの「Ⅰ」はバリバリのハードロック・アルバムで、69年当時の音楽シーンを考えればまさに画期的なサウンドだった。ダイアナロス&スプリームズがアフロヘアーで “Love Child~♪” なんて歌ってた時代に、いきなりの「コミュニケイション・ブレイクダウン」である。初めて耳にした人達は軽く3メートルはブッ飛んだに違いない。数ヶ月後に発表された「Ⅱ」も同じイケイケ路線の作品で、1st 同様強烈なエネルギーを発散する八方破れのスタイルだった。しかし彼らが “額面どおりのハードロック” を演奏したのはこのアルバムまでで、これ以降はハードロックを越えた “ゼッペリン・ミュージック” としか言いようのないワン・アンド・オンリーなスタイルを築き上げていく。
 71年発表の「Ⅲ」はそれまでのイケイケ路線とは大きく異なるアコースティックギター主体のサウンドで、ギンギンのハードロックを期待していたファンから総スカンを食ったと言われるアルバムだったが(←後追いの形で聴いた私も最初は???だった...)、今になって考えてみると後の彼らのスタイルに大きな影響を与えている。つまり、ジミーペイジのギター奏法の、フレーズ中心からリフ中心への変化である。「Ⅳ」で彼らは再びハードな音に戻るのだが、ペイジのギターは「Ⅰ」や「Ⅱ」のスタイルには戻らず、「Ⅲ」のスタイルを今度はエレキギターによって展開していくようになる。ひとつの同じリフを執拗に繰り返すことによってバンド全体の音が混沌とした大きな塊となり、聴く者の眼前に屹立するのだ。5thアルバムの「聖なる館」ではまだ様々な試行錯誤が見られたが、そういった紆余曲折を経た後で、まるでスッコーンと突き抜けたかのようにゼップのスタイルがほぼ完成したように思えるのが この6thアルバム「フィジカル・グラフィティ」である。
 私はビートルズの場合と同じくゼップのアルバムも悪戦苦闘しながらすべてUKオリジナル盤で手に入れてきたのだが、このアルバムに関しては最初何も分からずにレイター・プレスの再発盤を買ってしまい(←スワンソング・レーベルの見分け方ってどこにも載ってなかったもので...)、届いたアルバムに針を落としてみて“何か音が平板で迫力がイマイチやなぁ...” と思って eBay の過去のデータを詳しく調べ直した結果、自分の間違いに気付いた次第。見分け方のポイントは、レーベル面内周のやや右上部分にワーナー・コミュニケーションズの “Wロゴ” があるのが再発盤で、“Wロゴ” が無いのが正真正銘の1stプレス。再発盤のヘタレな音にどうしても満足できなかった私は結局もう一度eBayでこのアルバムを取り直したのだが、大袈裟ではなく音の鮮度・密度・エネルギー感すべてにおいて月とスッポンほどの違いがあった。落札価格は再発盤が£16で1stが£24だったが(←当時のレートで2,220円と3,340円...)、まぁこの程度の授業料ですんで良かったと思っている。
 このアルバムは2枚組の大作で、特にディスク1のこれでもかとばかりに聴き手を圧倒するソリッドなリフのアメアラレ攻撃は快感の一言に尽きる。シンプルかつダイナミックなサウンドに一発KOされた①「カスタード・パイ」、メロディアスなブルース・ロックがカッコイイ②「ザ・ローヴァー」、大きなうねりの中に立ち込める凄まじいまでの存在感に圧倒され11分という長さを全く感じさせない珠玉の名演③「イン・マイ・タイム・オブ・ダイング」、明るく親しみやすいメロディーとノリノリの演奏がゴキゲンな④「ハウズィズ・オブ・ザ・ホリー」、スティーヴィー・ワンダーの「迷信」を彷彿とさせるファンキーさが斬新な⑤「トランプルド・アンダー・フット」、砂漠をゆっくり旅しているかのような錯覚に陥るエスニックなアレンジとプリミティヴなパワーに満ち溢れたボンゾの骨太ドラムが印象的な超大作⑥「カシミール」... そのすべてが圧巻だ。
 ディスク2はもう “何でもアリ” の世界で、ハードロックというよりはむしろ世界中の様々な音楽の要素を貪欲に取り入れてゼッペリン・ミュージックの可能性の拡大に取り組んだ民俗ロックという感じ。そんな中で特に気に入っているのがアグレッシヴなリフがスリリングな⑥「ワントン・ソング」、軽快なブギウギ⑦「ブギー・ウィズ・ステュ」、後期ゼップを象徴するような骨太なサウンドがたまらない⑨「シック・アゲイン」で、そのどれもが№1ロックバンドとしての風格と余裕のようなものを強烈に感じさせるナンバーだ。
 レッド・ゼッペリンと有象無象のロックバンドとの一番の違いはその唯一無比なグルーヴにあり、それが最も顕著な形でレコード盤に刻まれているのがこの「フィジカル・グラフィティ」である。特に完璧な流れを誇るディスク1は非の打ち所のない完成度で、ゼッペリン・ミュージックの金字塔と呼べる素晴らしい1枚だと思う。彼らの全作品中で最もターンテーブルに乗った回数が多いのもこのアルバムだ。
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