shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Blues-ette / Curtis Fuller

2009-06-15 | Jazz
 昨日の大阪猟盤ツアーには続きがある。阪神百貨店を出た後3人でお茶しながら、まだ時間的にも金銭的にも余裕あるなぁということで、梅田第1、第2、第3ビルに点在するレコ屋を廻ることにした。
 ジャズに関しては欲しい盤はほとんど手に入れてしまっているので、買うとしたらついうっかり買い忘れた盤か、あるいは貴重な別テイク入りの再発盤ぐらいなのだが、昨日は plincoさん情報のおかげで、ボートラ3曲追加の「ブルースエット」(←“青い汗” ではありません、念のため...)をゲット、カーニバル・レコードで1,050円だった。このアルバムは数あるジャズ・レコードの中でも多分№1のウルトラ愛聴盤で、オリジナル・モノLP盤、再発ステレオLP盤、モノCDと3種類の音源を持っているのだが、ボートラ3曲聴きたいし、ちょうどステレオCDを持ってなかったので迷わず“買い”である。私にとってこのアルバムはそれほど好きな盤なのだ。
 そもそもこのアルバムを知ったのはまだ本格的にジャズを聴き始めるよりも何年も前の1989年のこと。アリナミンVドリンクのCM曲としてアルバム1曲目の「ファイヴ・スポット・アフター・ダーク」が頻繁にオンエアされているのを耳にして一発で気に入り、CD屋に走った記憶がある。私の音楽人生で通算2枚目のジャズCDである。89年といえばポイズンやデフ・レパードといった80'sハードロックを中心に聴いていた頃なので、いかにこの曲のインパクトが大きかったか分かろうというものだ。
 ジャズの基本パターンの一つとして、まずは全員でテーマ・メロディを奏で、次に各プレイヤーで順にソロを回してアドリブを展開し、最後にもう一度全員でテーマを奏でて終了、というのがあるが、この①「ファイヴ・スポット・アフター・ダーク」ではベニー・ゴルソンの見事なアレンジによってその究極の姿が示されている。いわゆる “ゴルソン・ハーモニー” と呼ばれる管楽器の心地良いアンサンブルは絶品で、ゴツゴツしたテナー・サックスとフワフワしたトロンボーンの織り成すほとんどユニゾンに近いシンプルなハーモニーが実に快適なのだ。まさにマジックである。叉、ファンキーにしてブルージーでありながらも日本人好みのするマイナー調メロディーも心の琴線をビンビン刺激する。こんなカッコイイ曲、ロック/ポップス界を見渡してもそうそう無いのではないだろうか?それと忘れてならないのがピアノのトミー・フラナガンの好演である。1分45秒から始まるベニー・ゴルソンのウネウネしたテナー・ソロ(この人はコンポーザー、アレンジャーとしては最高だがテナーの音は最低最悪!)の後を受けてトミフラの清々しさ溢れるピアノが滑り込んでくる瞬間の快感を何と表現しよう?まるで後光が差すかのような、天上の世界の夕暮れ(?)のような美しさ... サイドで光るトミフラ一世一代の名演だと思う。
 とにかく①が屈指の名曲名演なので「ブルースエット」といえば「ファイヴ・スポット・アフター・ダーク」でキマリ、みたいに思われているところが多々あるが、残りの5曲だって文句なしに素晴らしい!②「アンディサイデッド」はスイング時代のヒット曲なのだが、それが斬新な解釈によるリズム展開によってカッコ良いファンキー・ジャズに変身しているのには驚かされる。ベニー・ゴルソンという人はポール・マッカートニーのように舞い、リチャード・カーペンターのように刺す、ジャズ界屈指のメロディ・メーカーでありアレンジャーだということがよくわかる。この曲でもトミフラは大活躍だが、汚い音を撒き散らすゴルソンのテナーだけはええかげん堪忍してほしい。
 いきなり①の続編のようなゴルソン・ハーモニーが炸裂して涙ちょちょぎれるアルバム・タイトル曲③「ブルースエット」はこれまたカッコ良いマイナー・ブルース。モダン・ジャズかくあるべしと言えそうなナンバーなのだが、ここでも荒れ狂うゴルソンのサックス・ソロだけが難点だ。それ以外は申し分のない名曲名演だと思う。
 風雲急を告げるようなイントロから一気に駆け抜ける④「マイナー・ヴァンプ」はフラーのイマジネーション豊かなトロンボーン・ソロといい、相変わらず美しくスイングするトミフラのピアノ・ソロといい、もうお見事という他ない。演奏をガッチリ支えるジミー・ギャリソンとアル・ヘアウッドのリズム隊も賞賛に値するプレイを聴かせてくれる(^o^)丿
 ①がオモテの名曲なら⑤「ラヴ・ユア・スペル・イズ・エヴリウェア」はウラの名曲である。ここではさすがの悪童ゴルソンも曲の力に屈したのか、あるいはややスローテンポで典雅な曲想が功を奏したのか、ブヒバヒ吹きまくるのを抑えているようで大変よろしい(^_^) 叉、トミフラの神々しいソロが名曲名演度数を更にアップさせている点も聴き逃せない。ジャズってエエなぁ... (≧▽≦) としみじみ感じさせてくれる1曲だ。
 ラストの⑥「12インチ」でも前曲に続いてゴルソンは大人しくて行儀がいい。最初っからそうせんかい!とツッコミを入れながら、温かくまろやかなゴルソン・ハーモニーに身を委ねる心地良さ... あまり言及されないが、ここでもリズム隊がエエ仕事しとります。
 この「ブルースエット」は私の “ジャズ入門盤” であり、多分死ぬまで聴き続ける“永久盤”、全6曲どこを切っても最高のメインストリーム・ジャズが楽しめる、捨て曲なしの大名盤だ。

'89 アリナミンVドリンクCM