shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Paul Simon Greatest Hits, Etc.

2009-06-25 | Rock & Pops (70's)
 ポール・サイモンというと一般的にはどうしてもサイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」や「スカボロー・フェア」、そして「明日に架ける橋」といった、いわゆる “美しいバラッドを歌うフォーク・デュオ” のイメージが強いかもしれないが、それは彼のほんの一面にすぎず、決して本質ではない。特にS&G解散後の彼の諸作を聴くにつれ、その想いを強くする。あくまでも私見だが(ってゆーか、このブログは100%私見のカタマリやん!)、彼はS&G時代は常にアーティの美しい歌声を前提とした音作りをしており(だからバラッドの傑作が多いんよね)、彼が本当に好きなのはアコースティック・ギターで躍動感あふれるリズムをザクザク刻む「ミセス・ロビンソン」、「冬の散歩道」、「セシリア」、そして象徴的ともいえるエヴァリー・ブラザーズのカヴァー「バイ・バイ・ラヴ」あたりのサウンドではないか?これらの作品はアコギを使った力強いリズム・ストロークが凡百のエレキ・サウンドを凌駕するパワーを秘めていることを満天下に知らしめた傑作ぞろいだ。そして更にそこにフォルクローレ「コンドルは飛んでいく」あたりから芽生えたエスニックなサウンドへの尽きぬ関心が重なって花開いたのが解散後のソロとしての第1作「ポール・サイモン」(72年)だと思う。
 このアルバムの1曲目に収められていた⑫「母と子の絆」をリアルタイムで聞いたファンはぶっ飛んだに違いない。あの「サウンド・オブ・サイレンス」の歌い手が「明日に架ける橋」でゴスペルの本質を極めたと思ったらそのわずか2年後に今度はレゲエである。その肩の力を抜いた歌声がレゲエのまったりしたサウンドと絶妙なマッチングを見せており、1972年の時点でレゲエ・サウンドをこれ程見事に取り入れて完全に消化した上で自分の音楽として表現しているのだからもう凄いとしか言いようがない。彼のソロ諸作の中でも屈指の名曲名演だ。この盤には他にも「ボクサー」に「コンドルは飛んでいく」をふりかけてレンジでチンしたかのような「ダンカンの歌」やノリノリでリズムも弾む⑥「僕とフリオと校庭で」といった彼にとって重要な作品が数多く収めれらており、アルバムとしてのクオリティもハンパなく高いと思う。
 第2作「ひとりごと」(73年)からは⑧「僕のコダクローム」が全米2位まで上がる大ヒットを記録、お得意のドライヴ感溢れるノリノリのサウンドがたまらない。ディキシーハミングバーズをバックに従えた⑬「ラヴ・ミー・ライク・ア・ロック(母からの愛のように)」はCMソングなんかに使えばピッタリきそうな楽しい曲で、やはり2位まで上がる健闘を見せた。それにしてもフォーク、ゴスペル、レゲエ、フォルクローレにディキシーランド・ジャズと、様々なジャンルの音楽的要素を上手く消化してユニークなポップ・ソングを作り上げてしまう手腕は本当に大したものだと思う。
 第3作「ライブ・ライミン」(74年)は初のライブ盤で、何と言ってもその選曲が素晴らしい。怖いくらいに私の愛聴曲ばかり(あと、「フィーリン・グルーヴィー」と「ミセス・ロビンソン」が入ってたら完璧やね...)なのだ。LPのA面に当たる前半では弾き語り3曲の後、アンデスの民族音楽グループ “ウルバンバ” をバックに瑞々しいフォルクローレを聴かせ、B面に当たる後半ではゴスペル・グループの “ジェシー・ディクソン・シンガーズ” を従えてソウルフルな歌声を聴かせてくれる。特に⑤「ダンカンの歌」はスタジオ録音ヴァージョンを凌ぐ素晴らしさで、ウルバンバとの息の合った共演が生み出すグルーヴが絶品だし、フォルクローレ版「ボクサー」はこのアルバムでしか聴けない超貴重ヴァージョンだ。彼の弾き語りが心に染み入る⑪「アメリカの歌」は聴けば聴くほど味わい深いスルメ・チューン。セントラル・パーク・コンサートでのアーティ・ヴァージョンも良かったなぁ... (≧▽≦) ゴスペル・セットでは特に「ラヴ・ミー・ライク・ア・ロック」のノリが圧巻で、オーディエンスのハンド・クラッピングはS&G時代の「バイ・バイ・ラヴ」を彷彿とさせる心地良さだ。ライブで映えるナンバーの典型だろう。とにかくこのライブ盤、彼の作品中最も愛聴している1枚なのだ。
 第4作「時の流れに」(75年)はソロになって唯一の全米№1⑩「恋人と別れる50の方法」や③「時の流れに」といったヒット曲が入っていて世評も高いのだが、私は数回聴いてすぐに売り払ってしまった。バックのサウンドが洗練されすぎているというか、大嫌いなエレピの音が乱舞するいわゆるフュージョンぽいサウンドにどうもなじめないのだ。ボブ・ジェームズにリチャード・ティー、スティーヴ・ガッドとくればあの金太郎飴フュージョン・バンド “スタッフ” 一派だ。フュージョン嫌いの私としてはこれ以上はノー・コメント(>_<)
 77年に出たこのベスト・アルバム「グレイテスト・ヒッツ・エトセトラ」はそんな彼のソロ活動の軌跡をラクチン格安パック・ツアーで楽しめるお徳用の1枚だ。

Paul Simon - Mother And Child Reunion