shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Let It Be Hawaiian Style

2009-06-26 | Beatles Tribute
 ちょうど2年前の今頃だったと思うが、仕事の関係で神戸へ行く用事があった。私は大阪、京都、神戸方面へ出張した時は必ず地元のレコ屋を覗くことにしていて、この時もせっかく神戸まで出てきてそのまま帰るのはもったいないと思い、三宮~元町近辺のレコ屋を数軒廻ってみた。このあたりは昔はいくつかレコ屋があったのだが、震災後はLPを扱う店が激減し、今は生き残ったお店もほとんどがCD屋になっている。量・質共に別格の“ハックルベリー”を除けばあまり期待できないのが現状なのだが、この時はダークホースともいえるHMVで大収穫があった。実はあまりに暑かったのでちょっと涼みに(笑)HMVへ入っただけだったのだが、心地良い冷気に誘われてどんどん奥の方へ入っていくと試聴コーナーがあった。休憩がてらに涼みながら音楽を聴くのも悪くないと思い、すいている一角へと向かった。 “ワールド・ミュージック” のコーナーだ。何を聴こうかと見回すと1枚のCDが目にとまった。可愛らしいジャケットの左上隅の白地に赤でさりげなく “Let It Be Hawaiian Style” の文字が... (゜o゜) 何じゃこりゃ~と(←松田優作かよ!)急にテンションが上がった私は慌ててヘッドフォンをかぶった。おぉ、これはめっちゃエエやん!とすっかり気に入った私は大喜びでレジへと直行した。これで遠路はるばる神戸まで出てきた甲斐があったというものだ。
 この「レット・イット・ビー・ハワイアン・スタイル」はビートルズの名曲の数々をハワイのアーティスト達がウクレレを使ったり(ただしウクレレ一辺倒のサウンドではないのでウクレレ三昧を期待してると肩透かしを食います!)、ジャワイアン・アレンジ(ジャマイカ+ハワイアンのレゲエ風ビートを効かせたサウンド)で歌ったりしたアルバム。全15曲中6曲(①④⑧⑪⑫⑭)がこの企画のために新規に録音されたトラックで、残りはライセンスものという割合だ。何でも映画「フラガール」のヒットにあやかって夏に向けてビートルズのハワイアン・カヴァー・アルバムを、という安直な企画からスタートしたらしいが、聴く側にとってはありそうで無かった “ハワイアン・ビートルズ” という斬新な発想に興味津々だ。聞くところによるとタイトルに「ビートルズ」という名称を使用する場合は東芝EMIにお伺いを立てなければならないそうで、ソニーのこの盤では敢えて「ビートルズ」という表記をしなかったらしい。この業界も色々あるんやねぇ...(>_<) 内容の方はかなり充実していて、 “今のハワイで普通にラジオでかかっていてもおかしくない感じに仕上げたい” という当初の目標は十分にクリアしている。
 まずは何をさておき①「シー・ラヴズ・ユー」が圧倒的に素晴らしい。ハワイの超人気ガールズ・デュオ、ケアヒヴァイによるミディアム・スロー・テンポの絶妙なハーモニーが運んでくる甘酸っぱい薫りに胸がキュンとなる(≧▽≦) やっぱり一番出来の良い演奏を1曲目に持ってくるんやね。この1曲だけでも買ってよかったと思わせてくれるキラー・チューンだ。そしてそんな①と並んで気に入っているのが⑧「イエスタディ」で、サリーという新人アーティストの作品なのだが、原曲のメロディをストレートに歌って醸し出す素朴な味わいが実にエエ感じで、シンプル・イズ・ベストを地で行く名唱だと思う。とにかくこの2曲、脱力具合いが絶妙で、癒し効果は抜群だ。
 ②「ヒア・カムズ・ザ・サン」(リード・カポ・クー)は英語とハワイ語が交互に出てきて実に面白いし、③「ゲッティング・ベター」(ハワイアン・スタイル・バンド)は夏にピッタリのレイドバックしたサウンドが耳に心地良い。④「レディ・マドンナ」(イムア)はいわゆるバックヤード・スタイルのジャワイアンということで、ヤシの木の下でまったりと風に当たりながら聴きたいナンバーだ。ハワイのグラミーと呼ばれる“ナホク・アワード”最多受賞者ナレオの歌う⑤「ブラックバード」はユニークでありながらも原曲の良さを壊さない斬新なアレンジが面白い。これはかなり力入ってます(>_<) ショーン・イシモトの⑥「アイ・ウィル」はジェイク・シマブクロあたりを想わせる軽快なウクレレ・サウンドが楽しい。どこか歌い方の雰囲気がポールに似ていると感じるのは気のせいか?
 ケアリィ・レイシェルの⑦「イン・マイ・ライフ」は歌い上げる感じがちょっと胃にもたれる感じ。ウェイド・キャンバーンの⑨「ドント・レット・ミー・ダウン」やババBの⑩「サムシング」は③と同様の “ハワイアン・ビートルズ” そのものの常夏サウンド。マイラ・ギブソンの “ハワイアン・ダブ” ⑪「カム・トゥゲザー」は摩訶不思議な浮遊感覚がたまらない。これはかなりエエかも!ジョン・ヤマサトのライト&メロウなヴォーカルが爽やかな⑫「オール・マイ・ラヴィング」、ハワイアンなノリが新しいプカの⑬「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」と、夏の昼下がりにピッタリのナンバーが続く。
 ベン・ヴェガスの⑭「レット・イット・ビー」は原曲にかなり近いアレンジであまりハワイアン・スタイルという感じはしないが、これはこれでエエ感じの聴きごたえのあるナンバーに仕上がっている。ラストは「ウクレレ・ビートルズ」を彷彿とさせるようなイントロが印象的な⑮「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」。ロシェリー・ミドロという新人シンガーが歌っているのだが、ウクレレをバックに淡々と歌うこのトラックはハワイの夕暮れ時を想い起こさせる、ワイキキ・ビーチを車で流しながらゆったり気分で聴いたら絶対にハマるサウンドだ。
 ボッサ、ウクレレ、サルサ、ラテンetc 数ある夏向けビートルズ・カヴァー集の中で、この「レット・イット・ビー・ハワイアン・スタイル」は派手さはないものの、トップクラスの内容を誇る1枚だと思う。

シー・ラヴズ・ユー