shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

TOTO

2009-06-05 | Rock & Pops (70's)
 TOTOという名前を聞けば、普通の人ならサッカーくじか、あるいはトイレの便器メーカーを思い浮かべるだろう。しかしサッカーにも便器にも興味がなく音楽の事しか考えてない私にとって、TOTOと言えばジャーニー、ボストンと並ぶ、アメリカが誇る三大 “産業ロック” バンドの一つであり、特に初期の4枚のアルバムはそれぞれに思い出の詰まった愛聴盤なのだ。
 これらの “産業ロック” バンドはアメリカン・プログレ・ハード的なサウンドをベースに、高い演奏技術力でもってキャッチーなメロディーの曲をハードに(決してヘヴィーにじゃないところがポイントですね...)プレイしたサウンドが特徴で、英米ではどういう評価なのかは知らないけれど、日本には “大衆に迎合して魂を売った売れ線狙いのロック” としてこれらのバンドを見下すような風潮が一部にあって困ってしまう。私に言えるのはただ一言、ポップで悪いか!ということ。面白いことにこれら3つのバンドはすべて70年代後半に、宇宙をイメージさせるようなスペーシーなイラスト・ジャケットのアルバムでブレイクしたという共通点があるのだが、とにかくどのバンドも “売れ線狙い” なんかじゃなく、彼らの書いた “良い曲” に大衆が飛びついた、というのが真相だろう。
 そんなTOTOのデビュー・アルバム、タイトルはシンプルな「TOTO」で、これでは売りにくいと判断した日本サイドがつけた邦題が「宇宙の騎士」... まぁジャケットのイメージそのまんまの分かり易いネーミングだ。
 アルバムは①「チャイルズ・アンセム」で幕を開ける。何とデビュー・アルバムの1曲目からインスト曲だ。これがまた実にカッコ良いサウンドで、いきなり風雲急を告げるようなドラムとピアノの連打で始まるイントロから一気にたたみかけるようにギターが唸る。少なくとも私の知る限りではそれまでのロック界にこんなサウンドは存在しなかった。TOTOの初期4枚の中でもとりわけ高い緊張感を誇る1曲だ。②「アイル・サプライ・ザ・ラヴ」はサビのメロディーはどこにでも転がっているような凡庸なものだが、間奏のインスト・パートに入ると俄然盛り上がり、一気にラストまで駆け抜ける。バンドが一体となって燃え上がるような後半部分のインプロヴィゼーションは圧巻だ。③「ジョージー・ポージー」はソウルフルでありながら実に洗練された、いかにも都会的なボズ・スキャッグス系サウンドが絶品で、キーボードやシンセサイザーの隠し味的な使い方が実に巧いし、中間部の女性ヴォーカルもグルーヴィーだ。とにかくこの①②③3連発を初めて聴いた時はその完璧なテクニックに圧倒されたのを覚えている。
 軽快なポップ・ロック④「マヌエラ・ラン」や⑧「ロックメイカー」も水準以上の出来だが、中盤ではやはり⑥「ガール・グッバイ」に尽きると思う。炸裂するハイトーン・ヴォーカルといい、グイグイと引っ張っていくようなバンド・アンサンブルといい、ボストンなんかにも共通するようなアメリカン・プログレ・ハードの魅力を凝縮したような1曲だ。
 アルバム後半では⑨「ホールド・ザ・ライン」が出色の出来だ。青白い炎のような凛としたピアノの音と印象的なキラー・チューンで全米5位まで上がったのも頷けるような名曲名演。特にピアノの使い方は当時の耳には物凄く新鮮に響いた。
 こうやって久々に聴いてみても全然古臭さを感じさせないところが凄いと思う。B'z松本さんのプレイにもこの頃のスティーヴ・ルカサーからの影響が色濃く感じられるほどだ。このアルバムが出た時点で彼らは時代の先を行っていたのだろう。その計算された美しさは圧巻だ。

Toto - 01 - Intro (Child's Anthem)