shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Sing Sing Sing / Clark Sisters

2009-06-12 | Jazz Vocal
 コーラス・グループと一口に言っても様々なジャンル、叉、人数・性別の組み合わせがある。私が一番好きなスタイルは女性3~4人組で古いアメリカのスタンダード・ソングを歌う、いわゆるシスターズものである。アンドリュース・シスターズを始めとして、ディニング・シスターズ、キング・シスターズ、ベヴァリー・シスターズ、バリー・シスターズetc... 最近のものではスター・シスターズなんかも大好きだ。ある時は甘酸っぱくノスタルジックに、叉ある時は明るくキュートに、叉ある時はモダンな感覚でスインギーなコーラス・ワークを楽しめるのである。こんな美味しいジャンルを聞き逃しては男がすたるというものだ。私が大好きな “フレンチ・ポップスのイエイエ”、 “オールディーズのガール・グループ”、そして “ジャズ・コーラスのシスターズ”... やっぱり音楽は楽しいのが一番だ(^o^)丿
 そんな “シスターズもの” の中で私が特に愛聴しているのがクラーク・シスターズ。さっきYouTubeで検索してみたらゴスペルでも歌いそうな黒人女性4人組がズラ~ッと出てきてビックリした。もちろん同名ながら全く別のグループで、多分あっちの方がポピュラーなんだろうが、私のクラーク・シスターズは1950年代に活躍した白人女性4人組の方である。
 彼女らの前身はトミー・ドーシー楽団のフィーチャリング・カルテットである “ザ・センチメンタリスツ” で、独立後は私の知っているだけでも数枚のアルバムを吹き込んでおり、中でも先輩コーラス・グループの代表曲に挑戦した「ア・サルート・トゥ・ザ・グレイト・シンギング・グループス」(コーラル)、スウィング・バンドで有名になった曲を取り上げた「シング・シング・シング」と「スウィング・アゲイン」(共にドット)の3枚が出色の出来だ。どれにするか迷ったが、アルバム・タイトル曲の抗しがたい魅力で「シング・シング・シング」に決定。
 彼女らはトミー・ドーシー楽団のアレンジャーだったサイ・オリヴァーから “楽器の演奏者のように考え、クリエイトして歌うように” というジャズ・コーラスの基本を徹底的に叩き込まれたということだが、このアルバムでもそのスタイルを貫き、斬新な解釈でモダンなコーラスを聴かせてくれる。
 私がこのアルバムで最も好きなのが⑦「シング・シング・シング」と⑩「チェロキー」である。数年前に映画「スウィング・ガールズ」でも大きくフィーチャーされていた⑦は言わずと知れたベニー・グッドマン楽団のヒット曲で、スイング・エラを代表する1曲だ。イントロのドラム(というかこれはもう “太鼓” という言葉がピッタリ!)に彼女らの洗練されたスキャットが絡んでいく様が実にカッコ良く、縦横無尽に飛び交う4人の歌声は万華鏡のような華やかさだ。⑩でも洗練の極みというべき歌声は絶品で、その変幻自在のコーラス・ワークに引き込まれてしまう。風の中を駆け抜けていくような爽快感がたまらない(≧▽≦)
 グレン・ミラー楽団の④「リトル・ブラン・ジャグ」や⑨「真珠の首飾り」も素晴らしい。2曲とも元歌のイメージを大切にしながらも彼女ら独自の味付けによってウキウキ・ワクワク度が格段にアップしている。
 アルバム冒頭を飾る元親分トミー・ドーシー楽団の大ヒット①「明るい表通りで」は彼女ら最大のヒット曲の再演でもあるのだが、そのせいもあってかヒューマンな味わいを感じさせる落ち着いたナンバーに仕上がっている。同じくトミー・ドーシーの②「オパス・ワン」は、4人の歌声の微妙なブレンド具合が耳に心地良く、私が最高と信じるアニタ・オデイのジーン・クルーパ楽団での名唱に迫る素晴らしい出来になっている。
 4人のイラストが描かれたジャケットから彼女らの歌声が聞こえてきそうなこのアルバム、 “ジャズ・コーラス” というジャンル分けのせいであまり人の口に上ることはないが、私にとっては絶妙なハーモニーでイニシエの名曲をスインギーに楽しめる、こたえられない1枚だ。

The Little Brown Jug 1958 the Clark Sisters