shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Lez Zeppelin

2009-06-04 | Led Zeppelin
 レズ・ゼッペリンは読んで字のごとく、女性4人組でレッド・ゼッペリンのカヴァーをするという大胆不敵なバンドである。今の時代、 “女性がハードロックを演る” といってもランナウェイズで大騒ぎになった70年代じゃあるまいし、そのこと自体は別に珍しくも何ともないのだが、問題はカヴァーする対象である。よりにもよってハードロックの最高峰、あのレッド・ゼッペリンを、しかも “完コピ” で再現しようというのだから大胆不敵というか、恐れ入谷の鬼子母神だ。
 一般に、コピー・バンド というのは実に不憫な存在で、いくら完璧に本家を再現しようとも、上手いねぇ、そっくりやねぇ、と面白がられはするが、そこで終わってしまい、決してそれ以上の展開は望めない。「上手いコピー・バンドを聴くぐらいなら本家を聴く」、ハッキリ言ってしまえばその一言で終わりである。何かしらアレンジを工夫するとか、そのバンドのオリジナリティーを出すとかしないとすぐに飽きられてしまうのだ。しかし工夫しようにも、ゼッペリンの個性の塊のような演奏はそれ自体で既に完成されており、手を加える余地は残されていない。これで彼女達の目指した “ゼッペリンの完コピ” が如何に無謀な行為か分かってもらえたと思う。
 しかし “百聞は一聴にしかず” を信条とする私は、そんな彼女達のデビュー・アルバム「レズ・ゼッペリン」をネットで試聴してみて十分聴くに値すると思い、迷わず購入した。届いたCDは⑨「移民の歌」と⑩「ザ・レイン・ソング」のライブ・ヴァージョンがボートラとして加えられた日本盤。意味深な表ジャケもいいが、プラント同様の “へそ出し” スタイル(笑)で熱唱するヴォーカルのサラが写った裏ジャケが嬉しい。
 試聴時に一番気に入ったのが⑦「コミュニケイション・ブレイクダウン」... おぉ、何という疾走感!その圧倒的なエネルギーの奔流は下らない御託や先入観など木っ端微塵に吹き飛ばしてしまう勢いだ。特に1分22秒からの鬼気迫るギター・ソロにはペイジもニンマリするのではないか。プラントというよりはハートのアン・ウィルソンを彷彿とさせるヴォーカルもハイノートを炸裂させまくりで実にスリリングだ。そういえばプロデューサーは本家ゼッペリンのサウンド・エンジニアを務め、「キッス・アライブ」のプロデュースで名を上げたあのエディー・クレイマー... ナメてかかると大やけどをしそうなソリッドな音作りだ。
 ①「ホール・ロッタ・ラヴ」も大善戦だ。ドラムスはさすがにキビシイもんがあるが、ギターは原曲のイメージをかなり頑張って再現しているし、ベースもジョーンジーのラインをよ~く研究していて好感が持てる。ヴォーカルも気合入りまくりでゼッペリンとの比較を忘れて聴けば、これはこれで十分すぎるほど “熱い” ハードロックだ。 ②「オーシャン」でもロックに性別なんか関係ないことを満天下に示すようなテンションの高い演奏が展開されるし、⑧「カシミール」も①同様、原曲の雰囲気を上手く再現しており、彼女達のゼッペリンへのリスペクトがダイレクトに伝わってくるような真摯な演奏だと思う。
 ④「シンス・アイヴ・ビーン・ラヴィング・ユー」、やはりブルースになると若さが露呈してしまうのはしゃあないか。新人バンドにこの曲はちょっとハードルが高すぎたと思うが、どうしても演りたかったという心情は理解できる。⑤「ロックンロール」はスカスカのドラムス(別にボンゾと比べる気はさらさらないけど、もうちょっと何とかならんかったんか...)が難点だが、ヴォーカルの頑張りで救われた感がある。それにしてもこの曲、いつ聴いてもアドレナリンがドバーッと出るような爽快感溢れるロックの大スタンダードだ。何百回聴いても飽きひんね!
 イントロのギターに涙ちょちょぎれる③「オン・ザ・ロックス」とマンドリンを上手く使った⑥「ウインターサン」は共に彼女達のオリジナルで、ゼッペリンの雰囲気を上手く出したインストルメンタル・ナンバー。正直あまり期待していなかったのだがこれが結構な拾い物で、彼女達の才能と今後の可能性を感じさせる。次のアルバムはこの路線でゼッペリン風なオリジナルをもっともっと聴かせてくれい!
 プラントのグラミー5部門制覇で本家ゼッペリンのリユニオン・ツアーは夢と潰えた感があるが、あの音を聴きたいと願うファンは世界中にゴマンといる。そんなファンの渇きを癒してくれそうな可能性を秘めたレズ・ゼッペリンの今後に期待したい。

Lez Zeppelin - Black Dog