shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

大人になりたい / 山口百恵, キャンディーズ, 南沙織etc

2009-06-21 | 昭和歌謡
 漣(さざなみ)健児という名前を聞いて “あぁ、あの人か!” とすぐにわかる人はかなりの音楽通、しかもある程度年配の方に限られるだろう。しかし “待ち遠しいのは 夏休み~♪” や “可愛いベイビー ハイハイ~♪” というフレーズを聞けば多くの人が “あっ、それ聞いたことある!” となるのではないだろうか?彼こそが1960年代に数々のオールディーズの訳詞を手掛けて日本の音楽シーンに “カヴァー・ポップス現象” を巻き起こした伝説の人物なのだ。
 ライナーノーツによると彼は早稲田大学在学中(!)にあの「ミュージック・ライフ」誌を創刊し、その後は同誌の編集長を務める傍らで様々な洋楽ポップスの訳詞を手掛け、一大ブームを巻き起こしていったという。その作品数は驚異の450余...(゜o゜)、しかもその殆んどが今でも人々の記憶に残っている傑作というのだから恐れ入る。“あの娘はルイジアナママ やって来たのはニューオリンズ~♪” なんて一度聞いたら忘れられないくらいのインパクトがあると思うし、「砂消え」の出だしのライン “青い月の光を浴びながら 私は砂の中に~♪” なんかもうオリジナルよりもしっくりくるほどの名訳で、“原曲のメロディーにぴったりハマリました感” が清々しい漣作品屈指の傑作だと思う。
 「漣健児のワンダーランド」シリーズは、ビクターの「可愛いベイビー(中尾ミエ他)」、コロムビアの「ルイジアナ・ママ(飯田久彦他)」、東芝の「ヴァケーション(弘田三枝子他)」、キングの「渚のデイト(伊東ゆかり他)」、テイチクの「好きさ好きさ好きさ(ザ・カーナビーツ他)」、そしてソニーの「大人になりたい(山口百恵他)」と、レコード会社6社の合同企画として各社から1998年にリリースされた統一フォーマット・ジャケット・デザイン採用のオムニバスCDで、シリーズ6枚のうち5枚は60年代音源をメインとするもので他の盤で結構持っていたりするのだが、ソニー盤だけは70年代前半のアイドル歌手の名前がズラリと並んでおり、非常にレアな音源のオンパレードなのだ。因みにこれらのCDは既に廃盤となっており、私は運良くアマゾンマーケットプレイスで良心的な出品者から格安で買えたのだが、今現在ネットではプレミア付きで5,000円前後で取り引きされているようだ。
 この「大人になりたい ~漣健児のワンダーランド~」、収録歌手は山口百恵(①「ヴァケーション」、②「可愛いベイビー」、③「大人になりたい」)、キャンディーズ(④「小さい悪魔」)、南沙織(⑤「悲しき天使」)、麻丘めぐみ(⑥「恋はボサノバ」、⑦「ブーベの恋人」)、浅田美代子(⑧「そよ風にのって」、⑨「ネイビーブルー」)、天地真理(⑩「恋は水色」)、小林麻美(⑪「砂に消えた涙」)、安西マリア(⑫「悲しき片想い」、⑬「ビー・マイ・ベイビー」)、ゴールデン・ハーフ(⑭「電話でキッス」)、小山ルミ⑮「悲しき街角」)、栗田ひろみ(⑯「パイナップル・プリンセス」)、リンリン・ランラン(⑰「想い出の冬休み」)、林寛子(⑱「ベイビーフェイス」)、岡田奈々(⑲「すてきな16才」)、山本リンダ(⑳「別離」)、松本伊代((21)プリーズ・プリーズ・ミー~抱きしめたい)の16人... どうです?凄い顔ぶれでしょ?聴いてみたくなったでしょ?これで触手が動かなければ昭和歌謡ファン失格である。70年代前半、デビューしたてのアイドル歌手というのはとにかくシングルヒットを出すのに必死でアルバム制作に時間も予算もかけていられないので、アルバムの “埋め草” 用に60年代のカヴァー・ポップスのカヴァーをレコーディングすることが多かったのだろう。
 まだデビューして間もない頃の百恵ちゃんの生硬な歌声が聴ける①②③、ミキちゃんのキュートなリード・ヴォーカルとバックに回った2人のコーラス・ハーモニーの絡みが絶妙な④、悲しき天使コレクターの私が “日本人の歌う同曲ではベスト!” と認定した⑤、イーディ・ゴーメもエエけどこっちもイイでぇ(笑)と言いたくなる⑥、中間部の語りが時代を感じさせる⑦、ヘタと言われようが何と言われようがその素人っぽさが魅力の⑧⑨、ダニエル・ビダルみたいな雰囲気が横溢する⑩、大好きな麻美さんの初々しい歌声に萌える⑪、間奏のギター・ソロだけがGSしてる⑫、ハスッパなヴォーカルが耳に新鮮に響く⑬、アイドル歌謡の王道を行くアレンジで大正解の⑭、コテコテの昭和歌謡的アレンジが何故かしっくりくる⑮、声質と曲想がバッチリ合った掘り出し物⑯、香港出身の双子姉妹ががぎこちない日本語でアメリカ産カヴァー・ポップスを歌うという趣向が楽しい⑰、元気印なヴォーカルがパワフルに響く⑱、ライブでの男性ファンのキモイ嬌声だけはカンベンしてほしい⑲、リンダ節全開のヴォーカルに大爆笑の⑳、無理やりくっつけたような不自然なメドレー・アレンジにもめげず “カモン!カモン!” と絶叫する伊代ちゃんが健気な(21)と、迷演珍演のアメアラレだ。
 これは “60年代にアメリカン・ポップスという現象を翻訳して日本の音楽シーンに定着させ、8ビートと日本語の融合に成功した” 漣健児の輝かしい作品集としてだけでなく、70年代アイドル歌謡のレアな音源集としても楽しめる、マニア必携の1枚だ。

小林麻美 - 砂に消えた涙