転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



ポゴレリチの東京公演が、昨日は招聘元KAJIMOTOからも正式発表され、
早速、facebookのCultファンクラブに書き込んだところ、
「協奏曲が一晩で二曲だなんて、日本のファンはラッキーね」
「公演までに宝くじが当たったら、日本に行くのになあ」
と海外のポゴファンからも羨ましがって貰った。
全く、今回はことのほか豪華版だ。

7日の協奏曲、ショパンの1番と2番を一公演で両方やるということで、
特に1番は日本では初公開だから、これはかなりの聴きどころだろう。
しかしプログラムの末尾に、ひっそりと『ほか』とあるのは、何なのだ。
協奏曲ふたつも弾けば、ソリスト本人は「お腹いっぱい」だと思うが、
これ以外に、オーケストラとしての演奏曲目が予定されているのだろうか。

そもそも管弦楽のところに、『シンフォニア・ヴァルソヴィアのメンバー』
とあるので、私は最初、室内楽版か?とも思ったりしたのだ。
ポゴレリチが協奏曲二曲をやるときは、ヨーロッパでは昨今、
室内楽版が多いような印象が、私にはあった。
しかし山下一史氏が指揮とある以上、やはりオーケストラ版だろう。
協奏曲のうち一曲は、室内楽版だったりしたら、面白いのにな(^_^;。
まあ、とりあえず、シンフォニア・ヴァルソヴィアは、
2010年のLFJ東京でもポゴレリチと共演してショパンの2番をやっているし、
ポゴレリチとはほかの場所でも、一緒に仕事をしている仲なので、
多分、相性は良いのだろうと思われ、その点は期待できそうだ。

9日のリサイタルの曲目はどれもこれも、「お前は、もう、死んでいる」。
これって、去年アファナシェフがやった、
 ベートーヴェン:ソナタ12番から第3楽章「ある英雄の死を悼む葬送行進曲」
 ショパン:ソナタ2番から第3楽章「葬送行進曲」
 ワーグナー:「聖杯へのおごそかな行進」
 リスト:「詩的で宗教的な調べ」より「葬送」
というラインナップと同じくらい、死んでいるではないか。
私はかねがね、ポゴレリチとアファナシェフは、どこかで繋がっている、
という印象を持っているのだが(演奏は見た目ほど繋がっていないが、感性が)
今回も、似通った観点から構成されたプログラムという気がしてならない。

私にとって面白いのは、アファナシェフもポゴレリチも、
こういう「死」を臆面もなく扱ったような曲を演奏すればするほど、
「絶望」の暗さから本質的には乖離していく、という点だ。
「死」に耐性のない人間が、何かの拍子にうっかり「死」を見つめると
『もう駄目だ』『怖い』『助けて』『何もかもおしまいだ』、
……と、表現者本人が先に自己陶酔的な絶望に陥ってしまって、
聴き手に何かを伝える力には欠けてしまうことが多いように思う。
その点、アファナシェフなどは、心身ともに幾度も本物の地獄を見た人なので、
耐性のありようが、並の人間とはもはや全く違う(ように見える)。
彼は誇張もせず、煽ることもせず、ただぴたりと「死」そのものを直視し、
死の深さ・静けさや、小さな、しかし確かな光までも聴き手に伝えるのだ。
ポゴレリチは、……さて、今回はどうするだろうか?
2007年にベートーヴェンのソナタ32番を聴いたときには、
彼の描く、ゾンビになったおぞましくも滑稽なベートーヴェンに、
私は不思議な愛着を覚えたものだったけれど。

しかし、んなことより、セット券だ。
[5/7] S¥17,000 A¥14,000  B¥11,000 C¥7,000
[5/9] S¥15,000 A¥12,000  B¥9,000  C¥5,000
という料金で、今回は『2公演セット券』というものが設定されている。
それが、セットで『¥32,000+プログラム引換券付』。
私は筆算までやりましたですね。
割引には、なっとらんかった(爆)。

セット券の発売が3月10日、
単券だと会員が3月20日、一般が3月31日からの発売ということで、
つまるところセット券の魅力は、『いち早く二日分の席を入手できる』、
コレだったのだ、値段ではなく。
どっかの抱き合わせ公演みたく、ちとでも安くなるかと思った私が悪かった。
根本的に発想が間違っていた。殴っていいです。

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