ペン先調整はペンポイントを削ることであり、そのペンの寿命を縮めてしまうものだという意見を聞きました。
もちろんその誤解を解こうとその場でご説明しましたが、多くの人がそのように思っておられるのかもしれないと恐ろしくなりました。
確かに正しい知識のない人がペン先に取り組んだ場合、ペンポイントを削り過ぎて、万年筆の寿命を縮めてしまうことにつながると思います。
しかし、正しい知識と理性を持ってそのペンと使い手の相違、ペン自体の問題を見極めて施す調整は万年筆を良い状態にします。
ペン先調整には、標準調整とオーダー調整の2つの種類があると思っています。
標準調整はその万年筆をこれから使い込んで馴らしていくための調整で、より最適な状態にして使い込んでいくスタートラインに立たせるイメージです。
ペンポイントのズレをなくし、ペン先とペン芯の合わせを完璧にして、軽い筆圧で書いてもインクが出るように、書き出しもちゃんと出るようにします。
1,2年も使うとある日突然そのペンが劇的に書きやすくなるのを実感できます。細字のペンならもう少し早い段階で書き味の変化は訪れます。
オーダー調整は使う人の好みに合わせるというもので、インク出量の好み、筆記角度など使われる方の理想になるべく近づけるようにします。
当店でお買い上げいただいた万年筆全てにペン先調整はさせていただいておりますが、求められない限り、標準調整にとどめていますので、使い込んで馴らしていきたいという方もご安心下さい。
私も自分の万年筆はペン先のズレがなく、ペン先とペン芯の合わせが合っていれば、そのまま使うようにしていて、使い込んで馴らすようにしています。
その万年筆に対してどうすれば最小限の調整でとどめられるか見極めるのも、ペン先調整人の腕だと思っています。