元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

借りを返す

2014-07-22 | 実生活

私の大人になってからの人生は、若き日の借りを少しずつ返すためにあるのだと思っています。

若い時の自分の不甲斐なさから感じた鬱屈した想いを抱いて過ごした無為な日々をもう二度と過ごしたくないと思って以後生きてきたように思います。

子供の頃からずっと野球をやってきて、高1の時にある反発心があって辞めた後、無為な時間を過ごしていました。

野球部を辞めた理由が、大人になってから会社を辞めた理由のひとつと何となく似ていて、何歳になっても人の本質は変わらないと思いました。

やることがなかった私を受け容れて、付き合ってくれたのが、先に野球部を辞めていたKくんともう一人のKくんでした。

3人で何かをしようというわけではなく、ただそれぞれ誰かの家に行って、漫画を読んだりして、夜に帰る。

学校の勉強もやる気が起きなくて、3人ともあまりしていなかったと思います。

あの時のことは自分の人生の暗部になっている思い出したくない日々だし、私が若い人に知ってもらいたいと何か話すのは、たいていこの時の自分をイメージしている。

2年、3年と上っていくうちに自然と付き合わなくなって、高校を卒業してからは消息を聞くこともなかった。


先日、高校の同窓会があって、その後30年振りに3人揃いました。

3人であれからどうしていたか言い合い、あの時の自分たちのカスさ加減を笑い飛ばしているうちに、思い出したくないと思っていた人生の暗部が水に流れたような、何となくずっと借りのように感じていた借りが返せたように思いました。

Kくんは前にも店に来てくれたけれど、美容師として自分の店でしっかりとした地位を築いてやっているし、もう一人のKくんは会社を興していくつものレストランを経営していて、二人ともそれぞれ個性というか、オーラのようなものを持っていた。

それぞれが自分のやりたいこと(私たちの場合はそれしかないこと)を見つけて、あれからただ前を見続けてきて、やっと振り返る機会を得たように思いました。

私の場合、二度とあんな無気力な自分でいたくないという想いから、アルバイトも仕事も前向きにやってくることができて今に至っているけれど、きっと二人のKくんも私とそう変わらない想いで、その後出会ったものに飛び乗ったのではないかと思っています。

3人で話せるとは思っていなかったし、正直話したいと思っていなかったけれど、それであの時のことが暗い記憶から、良い思い出になったことは不思議な気がして、私にはとても嬉しいことでした。