何か新しくモノを手に入れて、その世界に入るところは人によって違うけれど、慎重な人は万年筆で言うとラミーサファリのようなものから入り、方やイタリア製のとてもきれいなものから入る人もいます。
でも数が増えるごとに、少しでも良いものをと、少しずつ金額的に高いものになっていくことは、皆さん同じだと思います。
私は万年筆以外でも身をもってそれを経験しています。
収入が変わらなくても、それは確実に上っていて、使うお金の比率がそのものに偏ってくるのと、我慢してお金を貯めて前よりも良い物を買おうとするようになるのは、正常な成長だと思っています。
店をしているという商売柄、お客様の気持ちを知ることは、自分が何かにのめり込んで買い物をすることだということに長く気付かずにいました。
でも靴をいろいろ買うようになって、その辺りの気持ちがものすごくよく分るようになったのは、ものすごく大きな収穫で、そういう言い訳もあって、私は靴を買い続ける。
靴に凝りたいと思って、清水の舞台から飛び降りるつもりで、トリッカーズを買ったのに、その価格帯のものが最早当たり前になって、トリッカーズヤパラブーツガ日常の靴になっている。
それらの靴でももちろん不満はなく、特にパラブーツなどはおそらく最も自分の足に合うものなのではないかと思えるくらい履き心地です。
でも、オーダー靴職人のイル・クアドリフォリオの久内さんと一緒に仕事をするようになって、彼が作る靴を履いてみたいと思って、何段もの段階を飛び越えてビスポーク靴を誂えてしまったのは半年前。
当然自分の足にピッタリと合って、柔らかいものでくるまれるような感じと、軽く足と一体感になる感じに、履いていてこんなに嬉しい気持ちにさせてくれる靴は他にないだろうと思っていました。
晴れの日を狙ってよく履いているので、さらに馴染んできて、他に替え難いものになっています。
歩きながら、あるいは足を組んで座って、自分の足元を見た時にいいなあと思います。
そしてオーダー靴の良いところ、自分の好みを表現できているというのは、素晴らしいものだと思っています。
そんな気に入っている靴があるけれど、革靴の超定番と言われている、オールデンの990というバーガンディコードバン革のプレーントゥの靴を買ってしまいました。
靴が好きだと言いながら持っていないことが何となく後ろめたかった、一度は履いてみたい靴でしたので、いずれ買うと思っていました。
雨の日に履けない靴を2足も抱えて大丈夫か?と思いますが、今はモノとして大変魅力のあるこの靴を久内さんの靴のように、靴として魅力のあるものに育てていきたいと思っています。