訪朝報告会「日朝友好親善における市民の〝チカラ〟
ピョンヤンで見たもの、考えたこと~」
知」と「人的」交流の蓄積が重要
今年の4月に訪朝した文化・学術・市民交流を促進する日朝友好京都ネット(日朝友好京都ネット=仏教大学元学長の水谷幸正会長)による報告会「日朝 友好親善における市民の〝チカラ〟~
ピョンヤンで見たもの、考えたこと~」が7月27日、京都市のウイングス京都で行われた。(主催=日朝友好京都ネッ ト)。 会場には、同胞、日本市民など約80人が参加した。報告会では、京都
大学大学院人間・環境学研究科の小倉紀蔵教授の基調報告に続き、訪朝団のメン バーたちによる朝鮮に対するそれぞれの視点でみた印象などの発表があった。参加者たちは、朝鮮との多方
面的で多様な交流の継続が日朝問題解決において重要 なポイントになるということを今一度確認した。
はじめに、日朝友好京都ネットの理事であり、今回の訪朝団の団長を務めた佐々木道博さんがあいさつした。今回で4回目の訪朝団を組んだ日朝友好ネッ トは、今回は特に学術研究に重点を
置いた訪朝を実現するため、58人が7つのグループに別れ、それぞれの専門分野に沿ったツアーを組み、意義深い訪朝を実 現することができたと報告した。また、この数年、京都から訪朝する
人がいっそう増え、その幅も広くなって様々な交流が行われている現況に触れながら、「今 後も、文化、学術的な交流、市民交流をさらに活発化させていきたい」と語った。
次に、小倉紀蔵教授が基調報告を行なった。
小倉教授は、今回の訪朝団は、考古学(朝鮮古代史)、歴史学(朝鮮近現代史)、経済学、新聞・放送学、国際関係論、思想および朝鮮文化・社会事情、 市民交流の7つのチームに議論と情報交
換、交流ができたこと、そしてそれらを通して得られたものを訪朝団の各チームで持ち寄って関心事、視点を共有出来た ことは大きな成果であったと指摘した。そして、「より多くの人が朝鮮を訪
れ、体験し、見て感じることで、朝鮮の『像』が多角度から描かれることになる。こ うした活動を一度で終わらせるのではなく、何度も訪れ交流を重ねる過程で、『知』と『人的交流』が蓄積されてい
くことが重要」と述べた。
また、金日成総合大学、社会科学院の教授らとの交流によって、「チュチェ思想」に対する理解がいっそう深まると同時に、朝鮮の社会、朝鮮の人民たちの姿や直接的な対話から、日本のゆがん
だ朝鮮観を正すヒントを得る可能性を感じたと話した。
小倉教授は、「今年は日朝平壌宣言から10年。この10年で何を得たのか。植民地支配の清算なしに日朝国交正常化はありえない。この問題をどう動かしていくのか、日本の総合力が試される」
と指摘した。
休憩の時間には、8日間の訪朝をまとめた映像が解説つきで流された。
また、
次に、今回初訪朝した人たちが報告した。水野直樹・京都大学は、次のように語った。
「 今回の訪朝では、安重根の碑を訪問したり、朝鮮の歴史研究者たちとの長時間 にわたる対話ができたことは成果であり、今後の学術交流を進めていく糸口になっ たと思う。 また、断片的
ではあるが市民たちとの対話・交流もできた。 朝、ホテルの周辺を散歩した時、通学中の小学生に話しかけると、恥ずかしがっ てそのまま行ってしまった。しかし、平壌や南浦の公園では、おじ
いさんなどに 「日本から来た」と声をかけると、「よく来た」と歓迎してくれた。公園でアサ リのガソリン焼きをしていた人々に誘われてビールも振舞ってもらったりした。 学術面だけでなくいろんな
面で有意義な訪朝であった。 これを今後につなげていくことが何よりも大事である。9月22日には、訪朝 団の学術報告会が開かれる予定だ。今年の9月は日朝平壌宣言から10年に当た る
時期。今後、日本と朝鮮の国交正常化を進めなければいけない。そのことを研 究者の立場、市民の立場から積極的に発言をしていきたいと考えている。そうい う思いも含めて、9月の報告会を
開きたいと考えている」
最後に水谷幸正会長が閉会のあいさつをした。
水谷会長は、日本の朝鮮に対する侵略の歴史について触れると共に、「日朝友好京都ネットの活動にいっそう尽力しつつ、日本と朝鮮の関係改善に向けた運動を今後も展開していきたい」と述
べた。
なお、日朝友好京都ネットでは、平壌宣言10周年を記念して、今次訪朝団の成果を込めた学術交流シンポを、9月22日に予定している。
(尹梨奈)