「メイド・イン・ジャパン」
福島原発事故発生時、東電社長(当時)は社員の「全面撤退」を指示したのかどうか。国会事故調査委員会は、関係者の証言をもとに、「東電が『全面撤退』を検討した形跡は見受けられない」と結論づけた。それなら、菅首相(当時)はなぜ同社幹部を叱りつけたのか
▼昨年3月14日、福島原発3号機で水素爆発が発生した。その日の夜、東電は首相官邸に対し、福島第1原発にいる約700人のうち、事故対応に当た る70人だけを残し、他の630人を福島第2原発に緊急退避させると伝えた。東電の資料などによると、原子炉の運転管理には最低60人が必要で、緊急時に は10倍の600人が動員されるという。それなら「70人」はまっとうな対応ではないはず。言った、言っていないだけの問題では済まされない
▼事故調委員長は福島原発事故について、「日本文化に根差した慣習」によって生じた「メイド・イン・ジャパン」の危機だったと指摘。報告書の英語版 では原発事故の原因として、日本人の「反射的な服従、権威を疑問視することへの抵抗、『計画を守る』ことへの傾倒、集団主義、島国根性」を挙げた
▼政府や大手メディアが情報を隠す一方、テレビから排除された専門家たちは事の深刻さを語ってきた。この構図が社会不安を一層あおった。何ら問題が解決しないまま、市民の反対を押し切って大飯原発が再稼働された。「メイド・イン・ジャパン」は根が深い。(天)