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在日朝鮮人に関 する総合的な研究拠点の構築を目指していきたい

2012-07-14 | 資料提供

        在日朝鮮人関係資料室開設記念シンポジウム 朝鮮大学校

収集保存の拠点の一つに

約180人の研究者や関係者たちが参加した

朝鮮大学校朝鮮問題研究センター付属在日朝鮮人関係資料室開設記念シンポジウム「在日朝鮮人関係資料収集保存の現況と課題」(主催=同研究セン ター)が7日、朝鮮大学校の記念館講堂で行われた。同シンポジウムには、山田昭次・立教大学名誉教授、荒井信一・茨城大学名誉教授、作家の高史明氏、百瀬 宏・津田塾大学名誉教授、吉野誠・東海大学教授、林哲・津田塾大学教授、水野直樹・京都大学教授、鈴木文子・佛教大学教授、木村健二・下関大学教授、中野 敏男・東京外国語大学教授など約180人が参加した。

 

シンポではまず、康成銀同センター長が開会の辞を述べた。

康氏は、解放後における在日朝鮮人史研究について、民族団体の立場からの研究や治安当局による在日朝鮮人調査が主であった1950年代の草創期、朴 慶植氏、小沢有作氏をはじめとする幾多の先人による60年代以降の実証的な研究、そして、90年代以降は、民族団体史料やGHQ及び日本政府の文書を利用 した歴史研究が本格化し、現在に至っては昔日に比べてはるかに研究内容が充実し、研究者の層も厚くなっていると振り返った。また、昨年11月、同大学創立 55周年に際して朝鮮問題研究センターを設立、センター付属の在日朝鮮人関係資料室を開設することにより、日本における朝鮮研究、特に在日朝鮮人関係史研 究の拠点の一つになることを目指すようになったと述べた。康氏は、「各団体や諸個人が所蔵する在日朝鮮人関係資料の収集保存の現況と課題を明らかにして、 将来に向けて資料情報のネットワークづくりを目指していきたい」と語った。

次に、金哲秀・在日朝鮮人関係資料室室長が同資料室の所蔵資料について報告した。金室長は、今日まで、同大学の図書館に保管されていた莫大な量の資 料は、目録はなく保存状況も劣悪であったと言及。資料の収集、保存、公開することによって在日朝鮮人関係の研究ならびに教育に資すること、在日朝鮮人に関 する総合的な研究拠点の構築を目指していきたいと述べた。また、同資料室には、在日朝鮮人関係の文書、パンフレット・ミニコミ誌、新聞、雑誌、ビラ、単行 本、写真など、約1万1,233件(段ボール約150箱分)が所蔵されていると説明し、その整理状況、分類、配列、特色と資料室の利用方法について解説し た。そして、資料のPDF化、オンライン検索システムの確立、資料収集、資料集の発行、各大学、関係機関でつくる「協議会」の設立などを今後の課題として あげた。

つづいて、河かおる・滋賀県立大学人間文化学部専任講師が「朴慶植文庫」について報告した。

河講師は、同氏の資料が滋賀県立大学の「朴慶植文庫」へと移管された経緯について詳しく触れた後、現在その資料は、ほぼ整理が完了したものが同大の 図書情報センターに所蔵されており、未整理のものは人間文化学部で保管されている状況であると述べた。そして、資料検索の方法について触れ、検索システム はあるが、目録がまだ完成していない状況、資料の性格にあった分類がされていない点などいくつかの問題点を挙げながら、「『協議会』が設立されたときには 積極的に参加して、『朴慶植文庫』がより広く利用されることを願っている」と述べた。

最後に、鄭栄桓・明治学院大学教養教育センターが、「在日朝鮮人史研究とアーカイブズ―解放後史を中心に」というタイトルで報告した。

鄭氏は、在日朝鮮人の解放後史については、最近では多く言及されている反面、そこで在日朝鮮人がどのような行動を取り、日本政府や占領軍がどんな政 策を展開したのかということが意外と明らかにされていないと指摘。一方で、現在大きな努力によって、同資料センター、朴慶植文庫などがあるが、本来もっと 早く作られるべきであったとし、その背景に、朝聯解散時の接収、消失、焼却といった、戦後日本国家の暴力の中で資料が暴力にさらされ続け翻弄されてきた事 実について触れた。そして、「現在非常に排外的で差別的な在日朝鮮人認識、特に解放後史は、歴史修正論的になっているなかで、具体的な資料を基に自由な討 論と研究を活発化させて、在日朝鮮人に関する歴史像をより豊かなものにさせていく必要がある」と語りかけた。

朝大の記念館講堂に設立された、在日朝鮮人関係資料室

総合討論では、洪祥進・朝鮮人強制連行真相調査団事務局長の司会のもと、樋口雄一・高麗博物館館長、小林知子・福岡教育大学教授、呉圭祥・在日朝鮮人歴史研究所副所長、金東鶴・在日本朝鮮人人権協会事務局長の4人のコメンテーターが、報告に対する意見を述べた。

樋口さんは、「今後、資料を収集する際、意見、体験についてのヒアリング作業が必要なのではと思う。書けなかった、あるいは書かなかった人々の声を 通して記録を留めてくことが大切。そのほか、インターネット上に掲載された在日朝鮮人に関する様々な情報も取り入れながら、データとして残していく方向も 検討していただければ」と述べた。

小林さんは、過去に比べ、在日朝鮮人史に関する多くの資料が出ている今、様々な国、地域からの在日朝鮮人に関心が高まっている反面、在日朝鮮人につ いて語るとき、マスディアを通じて見聞きしたものだけを持って、語られる傾向があると指摘。戦後60余年を経ても、日本の植民地支配の問題や、朝鮮半島の 分断が在日朝鮮人の日常を被っていることが今なお解消されていないという。その意味で、「今回朝大で資料収集の拠点を目指されているということは非常に重 要なこと」と語った。

その後、自由討論では、参加者の中から様々な意見が飛び交った。

シンポジウムのあと、同大でレセプションが行われた。

レセプションでは、朴点石・同大副学長が祝杯の辞を述べた。朴副学長は、同資料室の所蔵資料は、在日朝鮮人関係の研究において価値のあるものである こと、また在日朝鮮人の血と汗の結晶であり、広く共有すべき知的、文化的財産であると述べた。そして、「今後、関係資料の保存と収集を積極的に行うことに よって在日朝鮮人の様々な研究と後世の教育のために役立てたい」と話した。

(文・尹梨奈、写真・文光善)