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ひびレビ

特撮・アニメの感想や、日々のことを書いてます。
2025年9月から「はてなブログ」で「ひびレビg」を開設予定です。

「八甲田山」を見て

2024-12-30 06:32:50 | テレビ・映画・ドラマ
  「冬の八甲田山を歩いてみたいとは思わんか」思うわけねーだろ!?……とは口が裂けても言えなかったんだろうなぁ……というわけで、名前は知っていたが見たことなかった1977年の映画「八甲田山」、今回が初視聴です。

 当初「雪の中の遠足」「温泉で一杯」などと盛り上がっている時は「これ絶対……」と嫌なフラグを感じ取りながら見ていましたが、神田大尉側の隊員の一人が突如絶叫しながら服を脱ぎ、のたうち回った挙句にぴたりと動かなくなったあたりから見るに耐えない惨状が続いていきました。
 次々と斜面を転がり落ちていく隊員たちに、既に周囲を気遣う余裕など無く、歩いている最中にも折り重なるように一人、また一人と倒れていき、小便すらもままならず、冷静な判断力はとうに消え……
 そして、吹雪の中で立ちすくみ「天は……天は我々を見放した」と神田大尉。この言葉だけは聞いたことがありましたが、これほどまでに絶望的な状況下で発せられていたとは……この時、傍目から見て明らかに生存していると分かる者が殆どおらず、村長が言っていた「白い地獄」とはこのことだと、まざまざと見せつけられました。また、音も無く事切れていく様からは、最早声をあげる気力すら奪われていることが伺え、絶叫と共に亡くなっていく以上の恐ろしさを感じました。仲間内からの信頼が厚い神田大尉が「死」を口にしたことで、心の支えが折れてしまった者もいたかもしれませんね……

 冬の八甲田山が有する恐ろしさに加えて、神田大尉側は210名という大所帯をはじめ、指揮権が複数人に分散することによる意見の不一致、案内人不在かつ天候悪化の中の進軍、そり隊が引く重い荷物の処遇、ちゃんとした休憩が取れない、「こちらに違いない」「明日になれば天候は回復する」といった希望的観測など、雪山に関する知識不足等も仇となっているようにも見受けられました。この状況下で生存者がいたことにも驚きです。
 しかし、このような命がけの行軍を生き延びた先で待っていたのが……というのも、虚しさを感じさせられますね……

 たった2キロの道があまりにも遠い。そんな時に発せられた「雪とは一体何なのだろう」という一言。
 雪山を登ったことこそありませんが、雪の怖さはそこそこ理解しているつもりです。平地ですら積もった雪に足を取られ、寒さで体は凍え、顔には容赦なく雪が吹き付けてくるというのだから、それが山ともなればどれほどの脅威か……しかも道が分からないという精神的不安もあっては、心身共に正常を保ち続けるのは至難の業でしょう。

 改めて雪と、雪山への知識や経験の大切さを見せつけられた「八甲田山」でした。
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「SAND LAND」を見て

2024-10-16 08:02:54 | テレビ・映画・ドラマ
 2023年の映画「SAND LAND」を見ました。

 本作の舞台は砂漠が広がる国。国中が水不足に陥っている中、幻の泉を探すべく、町の保安官ラオは魔物であり悪魔の王子・ベルゼブブらと共に幻の泉を探す旅に出発します。

 正直予告の段階ではあまり食指は動かず、今回もたまたまWOWOWで放送していたから見た、ぐらいだったのですが……すいませんでした!!(汗。
 難解な専門用語や複雑な人間関係も無いためドラマが分かりやすい。旅を通して少しずつ互いのことを知っていく過程も良き。愛嬌と魅力に溢れた登場人物たち。そんな彼らの過去や謎を長くは引っ張り過ぎない。とてもテンポよくかつ分かりやすく物語が進んでいきました。

 当初は「わがまま放題のベルゼブブがラオと旅をすることで成長する」かと思っていたのですが、多少子供っぽいところはあるものの、ベルゼブブはだいぶ人?が出来ているためそういったことはなく、終始頼れる味方として活躍してくれました。可愛らしさとカッコよさを兼ね備えたキャラクターでしたね。
 イケオジかつ一本筋が通り、物語を進める核となるラオ。ベルゼブブの付き人的なポジションながらもテンション高め、されど締めるところはきっちり締めるシーフ。共に旅をする3人のバランスがとても良かったとも感じました。

 見終わって非常にスッキリする、「良いものを見た」という満足感が得られる映画でした。万人に薦められる映画というのは、この作品のことを言うのかもしれないと思えるほど、良い映画だったなと。ありがとうございました!
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「12人の優しい日本人」(1991年の映画)を見て

2024-09-25 07:59:58 | テレビ・映画・ドラマ
 1991年の映画「12人の優しい日本人」を見ました。

 本作は数年前に一度見ていたのですが感想を書かずじまい。で、先日「記憶にございません!」の再視聴をきっかけに見直しましたが……やっぱいつ見ても心がキュッとなる作品ですね!(苦笑。

 とある事件の陪審員として集められた12人。満場一致で決まりかと思いきや、陪審員2号の発言をきっかけに様々な議論が展開されていきます。
 被告の容姿や境遇に注目する者。自分の意見を主張したがる者。他人の意見に流される者。是が非でも議論を続けようとする者。議論の場が苦手な者はっきりと意見を述べない者。十人十色、様々な意見が噴出する中で徐々に事件の輪郭が見え始め、見ている側も有罪か無罪かを考えさせられます。
 もしも自分があの立場にいたらと想像する一方で、あくまで第三者として見ているからこそ「はっきり言えよ」「議論に参加しろよ」とは思えるものの、いざあの場に立った時に実践できるかどうかは別の話だなとも感じさせられました。

 また、自分の思ったことを口にするのは簡単なようでいて、自分の発言が周りの人間や裁判に与える影響を考えるとどうしても尻込みしてしまう気持ちも分かります。議論が白熱していくにつれて息苦しくなり、見るのが辛くなっていくのは、それだけ本作が真に迫っているからだろうなと感じました。

 自分一人では上手く説明できないことでも、他者の手を借りることで糸口が見つかることもある。状況証拠に基づいた意見も必要だが、時には感情的な意見によって事件の別側面に気づけることだってある。様々な人間が寄り集まって異なる意見を交わすことの難しさと大切さを感じました。
 そして、時に怒号が飛び交うのも、見方を変えれば事件の関係者を慮ってのことでしょう。そういった優しさ故に互いの考えをぶつけ合う、12人の日本人の様を楽しませていただきました。
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「人間爆弾 立ち止まったら、爆発」を見て

2024-09-19 08:16:30 | テレビ・映画・ドラマ
 「人間爆弾 立ち止まったら、爆発」を見ました。

 空港で客を下ろしたタクシー運転手・サンティは爆弾テロに居合わせてしまい、被害者をタクシーで病院まで運ぼうとしたが、運悪くその男は犯人グループの一味だった……といった感じで始まる本作。サンティと男の間に漂う緊張感や関係性の変化、両者の家族の様子、頼もしいタクシー運転手仲間と優秀な捜査陣といった前半1時間ほどの描写は割とハラハラしながら見ていました。

 じゃあ後半はというと……ぶっちゃけ人間版「スピード」です(汗。そもそも何でこの作品を見る気になったのだろうと思ったら、私が「スピード」を何回か見ているからだったんだろうなと、見終わった後に気づかされました。
 サンティが爆弾ベストを着せられて歩き始めてからは、明確な爆破のタイミングが分からない緊張感はあります。が、当のサンティに精神的な疲労は見えても、肉体的な疲労があまり感じられず、いつまでも歩けそうな印象すら受けてしまい、その点における緊張感はやや薄かったですね。足を負傷している、普段運動していないなど肉体的な限界が感じられる場面が殆ど無かったのも、物足りなさを感じた一因だと思います。
 加えて捜査陣が優秀なので「サンティ自身が爆弾テロの犯人だと誤解される」といった展開も無く。言ってしまえば頼もしすぎる味方として事態の解決に尽力してくれるので、孤独感や不安も薄かったかと。かと言って無能なら面白くなるわけではないですし、塩梅が難しいなと。

 また、サンティが街を歩き始めるまでは余裕の雰囲気を醸し出していた犯人グループなんですが……君らそれで終わり!?もう一つ二つ策講じろよ!?と思ってしまうほどに、あっさりした終わり方で拍子抜けしてしまいました。ここら辺は「スピード」を見ていたからこそ、より一層感じた部分でした。終盤の盛り上がりどころも、あれはあれで緊張感がありますが、一方で犯人グループの扱いが微妙なのでどう感じていいのやら……

 後半は既視感と物足りなさがあったものの、奮闘するさまは悪くなく、前半の緊張感は割と好きな映画でした。
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「記憶にございません!」を見て

2024-09-18 08:17:31 | テレビ・映画・ドラマ
 2019年の映画「記憶にございません!」を見ました。実のところ4年ぐらい前には見ていたのですが、何だかんだで感想を書く時期を逃し続けて今に至ります。ていうか、5年前の映画ってマジ?

 本作は気にはなっていたけど結局見に行ってなかった映画の一つ。当時見た予告では記憶を無くした史上最低の総理のドタバタ劇!という印象を受けていましたが、実際はそこまでドタバタしているわけではなく。派手に盛り上がるのではなく、静かに沸々と盛り上がる感じでした。

 劇中での行動の結果、世間の評価がそれまでと180度変わる……なんて甘い話は無く。裏があるのでは、戦略ではと疑われるのも当然の話。元々人気が無かったからこそ、人が変わったように振舞い始めた相手を疑わない方がおかしな話です。「口では何とでも言える」。だからこそ、行動で示していかなければならず、その口から発する言葉にも信念を感じさせなければならないのでしょう。
 その行動の結果で目に見える変化が得られなかったとしても、それでも何もしないよりは確実に状況は変えられる。1人の信頼を得ることの難しさ、1%の大切さも伝わってきました。

 人間、やり直すきっかけとやり直そうとする意志さえあれば、どん底からも這い上がっていける、僅かながらでも再び信頼を得ることが出来ると感じた映画でした。ハッピーエンドで終わらせず、「これから」を期待させられる良い終わり方だったと思います。
 
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「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」を見て

2024-09-17 07:27:24 | テレビ・映画・ドラマ
 2023年に公開された映画「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」を見ました。

 本作は、1971年の「夢のチョコレート工場」、2005年の「チャーリーとチョコレート工場」に登場した天才チョコ職人ウィリー・ウォンカが如何にしてチョコレート職人として名を挙げたかが描かれています。とはいえ、前述した2作品を見ていなければ話が理解できない、ということはありませんし、そもそも2005年版とはウォンカの過去描写が異なるため、繋がりは無いのかな?と。

 ただ、ミュージカル感や長い(読めない)契約書、ウンパルンパやウォンカの歌など1971年版に対するオマージュが多めなので、出来ることなら本作の前後に見ておくことをおススメします。
 また、「貧乏人という言葉を聞くと気持ちが悪くなる」人物は、2005年版における「両親」を口にしたくないウォンカを、序盤に登場する靴磨きの少年は2005年版のチャーリーをそれぞれ彷彿とさせます。加えて、ウォンカを排除せんと企む連中、フィグルグルーパー、プロドノーズ、スラグワースは2005年版でレシピを盗んだ者たちであるなど、2005年版へのオマージュも感じられました。ウォンカの過去の掘り下げも2005年版のみの要素でしたしね。


 夢と希望を胸に憧れの地へ降り立ったウォンカの行く手を阻むのは、チョコ組合を結成して警察署長たちを丸め込んでいるスラグワースたち。更に読ませる気のない契約書で強制労働を強いられるウォンカは、同じ境遇の者たちと協力し、どうにかこの状況を打開しようとする……と、工場建設以前の物語のため、過去作とは作風がかなり異なっており、「チョコレート工場」のような物語を期待しているとやや面食らうかなーと。

 個人的には敵味方問わず誰もがチョコに夢中で、チョコに浮かれて踊りだす様は見ていて楽しかったですし、小さな工場を広げる様にはワクワクさせられ、大きな工場を巡り続ける「チョコレート工場」とはまた違った面白さは感じられました。
 一方で悪役の個性が強すぎて、味方の個性がやや物足りなくは感じてしまいました。いきなり「甘党でしょ?」とめっちゃ楽しそうに歌い踊りながら署長を篭絡しようとし、それでいてシリアスな時はシリアスやる悪役に勝てというのも難しい話ですが(笑。

 そんな感じでウォンカの始まりが描かれた作品でした。
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「夢のチョコレート工場」を見て

2024-09-16 08:08:13 | テレビ・映画・ドラマ
 1971年の映画「夢のチョコレート工場」を見ました。

 2005年の「チャーリーとチョコレート工場」は何回か見るくらいには好きな映画でしたが、まさかそれよりも30年以上も前に映像化されていたとは知りませんでした。

 基本的なストーリーは両者同じですが、最大の違いはチョコレート工場の主・ワンカ(ウォンカ)のキャラクターを掘り下げるか否かかなと。2005年版ではワンカの過去や父親との確執、家族の大切さに焦点が当てられていたのに対し、本作ではそういった掘り下げはありません。
 一方で本作には、ワンカの技術を盗み出したスパイ・スラグワースが登場し、金の券を当てた子供たちに対しワンカの新しい発明「溶けないキャンディー」を盗んでくれば大金を与えると提案してきます。スラグワースの名前や同様のキャンディーは2005年版にも登場しますが、いずれも物語の根幹に関わる話では無かったため、この違いには驚かされましたね。
 また、終盤の展開もワンカの掘り下げの有無によって大きく異なっていました。2005年版は「選んだ」、本作は「選ばれた」といったところでしょうか。

 その他、本作の特徴としては、そこかしこで登場人物たちが歌いだします。本作ではウンパ・ルンパはもちろんのこと、冒頭からお菓子屋さんの店員、チャーリーのお母さんやおじいちゃんも歌うし、更にはワンカやベルーカまで歌いだすので、2005年版よりもミュージカル感が強くなっていたなーと。

 チャーリー以外の子供たちについては、ベルーカは2005年版の方がまだマシなんじゃないかと思えるくらいのわがままっぷり。あちらの展開も好きですが、歌いながら流れるように落ちていく本作も見事の一言に尽きます(笑。
 また、テレビっ子のマイク。2005年版では「天候と株価の動きを参考に製造日からチケットの所在を確定した」ほどの頭脳の持ち主でしたが、これは本作に出てくる「コンピュータで券の在処を見つけようとする人物」の要素をマイクに取り入れたものなのかな?という発見もありました。

 工場の中にいるとは思えないほど、不思議で広大な世界が広がっている「チャーリーとチョコレート工場」も好きですが、不思議なテーマパーク感満載の本作「夢のチョコレート工場」も、どちらも好きです。後者は特に手作り感が良い味出してますねぇ……
 というわけで、その始まりの物語も見ていこうと思います。
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「カラオケ行こ!」を見て

2024-09-05 06:52:11 | テレビ・映画・ドラマ
 今年1月に公開された映画「カラオケ行こ!」を見ました。

 本作はとある事情からカラオケが上手くなりたいやくざ・狂児と、悩みを抱える合唱部の部長・聡実くんの物語。正直「2024年公開の映画がこんなに早く放送されるってことは、あんまり人気なかったんかな?」などと穿った見方をしていましたが……
 本当にすいませんでしたーーーーーー!!!!年齢も立場もまるで異なる二人がカラオケに通う中で少しずつ育んでいく友情!「絶対どっかでぶち切れる」と思っていたら終始頼もしい狂児!部長ながらも歌に関する悩みを抱える聡実くん!そんな聡実くんが居場所を求めるようにたどり着く場所!と、あの言葉!
 笑いあり!青春あり!涙あり……どこを切り取っても文句のつけようがありません!こんなに面白いとは正直全く予想していませんでした。特に「紅」と内容のベストマッチっぷりが素晴らしかったですね。「紅」は何度かカラオケで知人が歌っているのを聞いていましたが、冒頭の英語のパートの意味は初めて知りました。歌詞の内容を理解するのって大事なんだなって……

 個人的に好きなシーンはいくつもありますが、その内一つを挙げるとすれば、狂児と聡実くん、双方が決戦を間近に控える中で起きた出来事における、狂児の対応がお気に入りです。狂児はやくざ故にちょっと荒っぽいことをする場面もあるのですが、ああいう「大人」な対応が出来るってのは素直に尊敬できる部分ですね。
 あと、合唱部の後輩・和田も良いんすよ。真面目に、真剣に取り組んでいるからこそ、はぐらかされたりするとモヤっとする感じ、すっげぇわかる……そんな和田と聡実くんとの間には軋轢が生じるのですが、終盤は……「和田も聡実くんと同じ悩み抱えたんかな」「何だかんだで部長として尊敬していたからこその態度だったんだろうな」など、色々想像できるのも良き……

 前半のコメディな雰囲気も、中盤にかけて親交を深めていく様も、終盤のシリアスな雰囲気も、終始楽しめました。カラオケに友情、青春と、劇中で取り上げられた要素については余すことなく見たいものを見せてくれたうえで、想像の余地を残す良い作品でした。

 そしてED!本作のラストを飾るのにこれ以上の曲は無いでしょう。あの曲が流れて途中退席・視聴をやめる方はいらっしゃらないと思いますが、必ず最後まで見て欲しいです。思わず「うっわそこまでやってくれるの!?」と口に出してしまいそうなほど、良い演出がありました。あそこに至るまでの過程は……色々と想像できますが、個人的には「忙しかった」よりも「立場を改めて」的な理由なんかなぁと。
 ともあれ、素晴らしい作品でした。ありがとうございました!
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「犬神家の一族(1976年)」を見て

2024-08-19 07:38:49 | テレビ・映画・ドラマ
 1976年に公開された「犬神家の一族」を視聴しました。

 何度か映像化されているとのことですが、私にとっては本作が初「犬神家」。事前情報と言えば「クレヨンしんちゃん」で「犬神家の一族ごっこ」があったこと、白いマスクや池に逆さになっている様子を指して「スケキヨ」と呼称していたことぐらいです。今にして思うと、しんちゃんは本作をどのようにして知ったんですかね……?

 それはそれとして、犬神家の遺産を巡る争い、次々と命を落としていく関係者、予想していた通りだと思っていたトリックの思いがけない裏、愛憎渦巻く悲劇の物語……間もなく50年が経とうとしている本作ですが、今なおこうして放送されるほどの「名作」だということを肌で感じました。

 個人的に今作で驚かされたのは「悲鳴」でした。
 まず序盤。ホテルの女中・はるが若林の死体を発見するシーン。女性の悲鳴というと「キャーッ!」と甲高い声のイメージ……まぁ、ドラえもんのしずかちゃん的な感じの声を想像するのですが、ここの悲鳴はそんな可愛らしいものではありませんでした。何か異常なものを目撃した、というのが声だけで分かるほどの見事な悲鳴にまず驚かされました。

 続いて犬神家の長女・松子と、亡くなったと思われていた佐清(すけきよ)を出迎える竹子と梅子のシーン。目出し帽的なものを被っている佐清を見た時の反応は、字幕では「ヒャア!」と表記されており、字面だけならば息を吐きながら発しているように見えます。が、実際には息を飲みながら発しているため、こちらも信じられないものを見た、というのがより一層鮮明に伝わってきますね。

 そして金田一耕助が第二の被害者を目撃するシーン。刑事や探偵が死体を発見して驚くことこそあれ、金田一のように絶叫するのはなかなか見ないため驚きと新鮮さを感じました。探偵だって人間。むしろあんなのを目の前にして絶叫するなというのが無理がある……
 にしても石坂浩二さん演じる金田一。物語上の都合だと言ってしまえばそれまでですが、様々な人物から情報をすんなり聞き出しており、どこか人懐っこさ、親しみやすさを覚えますね。「こいつになら話しても良いか」的なことを思わせる雰囲気が漂っています。

 最後に第四の被害者を発見するシーン。ここが本当に凄かった。言ってしまえばフィクション、作りものだというのに、一体どうすればあんな声が出せるのか。どうすればどれほど感情移入すればあの表情が出来るのか。死体を見つけたことへの驚きよりも、あまりの演技力に感服させられました。
 こうした悲鳴を中心に、全体的に作りものだということを思わず忘れてしまうほど真に迫った演技が本作の魅力の一つなんだろうなと。


 そんなこんなで初めての「犬神家の一族」、楽しませていただきました。
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未知の映画に手を出して

2024-07-25 08:02:13 | テレビ・映画・ドラマ
 最近では配信サイトで気になっていた映画を見たり、昔見た映画を見直したりといったこともありますが、そうなるとどうしても自分の好みの映画ばかりを見てしまうわけで。

 なので、時折WOWOWで「タイトルが気になった作品」を視聴する、ということも間々あります。それで先日視聴したのが「焼肉ドラゴン」という映画でした。私の予想は「現代を舞台に、焼肉ドラゴンで熱く笑える焼肉バトルが繰り広げられる!」だったのですが、店に入ってみると「舞台は大阪万博を間近に控えた高度成長期の日本。古びた家屋が立ち並ぶ路地で『焼肉ドラゴン』を営む在日コリアン一家の物語」でした。なんもかんも違う!(汗。
 当然期待していた焼肉バトルは起こらないどころか、辛く、苦しい出来事の数々が押し寄せてきました。しかし、例えば桜の花びらが舞い散る光景を目にした時のように、昨日がどんな日だったとしても、心が明るくなる時はある。互いに支えあい、明日を信じて生きていこうとする人々の物語を最後まで見届けました。個人的には「焼肉ドラゴン」を営む父親のキャラクターが一番好きですね。母親に比べると寡黙で、最初は少々頼りなさげに見えたのですが、実際には苦境にあっても子供たちのことをちゃんと考えていたり、とある出来事が起きた際に感情を露わにしたのが印象的です。頼りなさげな印象が最後にはガラッと変わっていたので、ドラマの大事さを感じさせられました。

 ……とまぁ、そんな感じで、期待していたものと全然違ってもそれを楽しめることもあります。が、一方で途中まで見ても面白さが一向に分からず、結局途中で見るのをやめてしまう作品も少なからずあるわけで。映画館なら「お金を払ったんだし最後まで見るか」となりますが、家で視聴する場合は、こちらもお金は払っているものの、映画館よりかは簡単に「もうやめた!」となってしまうのは良し悪しですね。

 現在は2作品視聴待機中なのですが……一作は割と面白そうだけど、もう一作品はタイトルで落ちている気がしてならない。名前がズルいよ「シャーク・ド・フランス」。
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