みつばやま小零庵だより

宇宙の塵、その影のような私ですが、生きている今、言葉にしたいことがあります。

石垣りん詩集から ・・・ 旅情 ・・・

2019-07-15 13:06:53 | 芸術
長梅雨のこんな日にふさわしい詩ではないが、あまりにも心に沁みるので、以下、書き留めておく。

          ふと覚めた枕もとに
          秋がきていた。
    
          遠くから来た、という
          去年からか、ときく
          もっと前だ、と答える

          おととしか、ときく
          いやもっと遠い、という

          では去年私のところにきた秋は何なのか    
          ときく。

          あの秋は別の秋だ、
          去年の秋はもうずっと先の方へ行っている  
          という。

          先の方というと未来か、ときく。
          いや違う、
          未来とはこれからくるものを指すのだろう?
          ときかれる。
          返事にこまる。

          では過去の方へ行ったのか、ときく。
          過去へは戻れない、
          そのことはお前と同じだ、という。

          秋
          がきていた。

          遠くからきた、という。
          遠くへ行こう、という。

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