長期旅行

2007-05-23 15:05:29 | Weblog

あのとき君の流した涙ひとつぶが

地面に落ちて、

陽光にさらされて蒸発して水蒸気になって、

空に昇った。


そこで大きな雲になり、風に運ばれて空を

どこまでもどこまでも運ばれて、

太平洋の真ん中で、冷たい風に吹かれてまた水に戻り

海へと落ちて行く。

このときの君は、雨のひとつぶ。


海に落ちた瞬間に君は海水と呼ばれる水になる。

地球で一番大きな水の塊、海。

君はその一部であり、全体でもある。


でもある日の君は鯨に飲まれて、

彼の身体の一部になる。

鯨の血、として存在する君。


その鯨はふと思いついて、深海への潜行を開始した。

僕はそれで君を見失う。

いくらなんでも深海まではついていけないから。


でも僕は想像する、その後の君を。


鯨は無事浮上して潮を吹いたんだ、その潮の中に君は居て、

海に落ちてまた蒸発した。

そしてまた雨、今度は地下深く潜ったんだね?


そんなことを繰り返して繰り返して、

あれから何年経ったんだったっけな?


僕は昨日、君に再会したんだ。


何気なく自販機で買ったエビアンの中にいるなんてね。

ははは、驚いたよ。


でも君はまた旅に出る、

次にいつ会えるのかはわからない。

もしかしたら、もう会えないかもしれない。


でもそれはそれでいいんだ。

君は君でそうやって永遠に旅を続けるのだろうし、

僕の方にしたってそれは確かに、そうだからさ。


それじゃ、またね。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ランブルフィッシュ稼動中その2 | トップ | エレクトリック・アコーステ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事