ちょっと前までは「もしトラ」と言って揶揄していたわけだが、銃撃事件が起こり「ほぼトラ」「確トラ」という言葉まで飛び出してきた。ふつうにみて、確かにトランプで決まりそうだと誰でも思っていることだろう。「トランプを大統領にするために、神が彼を助けた」と言われるほどのアメリカン・ヒーローに上り詰めているからだ。
トランプが大統領になるとどうなるか。関心は実際のところそこである。いちおうトランプの言動を信じるならば、中国との対立がさらに明確になり、保護主義的なアメリカの姿勢がさらに加速するだろう。移民受け入れも厳しくなろう。地場産業にも補助金を出すだろうし、金持ち優遇の税制になり減税もやるし、軍事力も増強するだろう。もちろんこれはバイデンだったとしても、基本的には同じなのだが、その加速の度合いがより明確化するので、他国への影響力も大きいとみられる。もちろん日本にとっても、ということになる。それによりアメリカがより強くなると表面的に考える大衆はあるだろうが、アメリカの強さは自由さにあるのは間違いないことなのだ。だから長期的には、徐々に停滞の道を歩むことにはなるだろう。それがトランプの4年で収まるのかは分からないが、これも他国に影響があることだろう。逆説的に、中国がさらに強くなるかもしれない。
しかしながら、良い面は無いのだろうか。実際は、アメリカ大衆がいちばん望んでいるのがトランプなのである。いったんその望みが叶うのだから、そうした目先の失望よりも、さらに大きな期待の方が勝っていることには間違いない。トランプは日本の側からすると間違った人だが、アメリカ内部からすると正しいことを実行できる人だ。そういう意味では、アメリカのためになるのだから、好転するものも、それなりにたくさんある。アメリカによる世界の均衡のバランスは揺らぐかもしれないが、アメリカ国内だけは、そんなの関係ねえ、と言えるわけだ。本当にロシヤはウクライナに勝つかもしれないし、中東の衝突も激しさを増すかもしれない。アメリカは巨大な資源国だから、そういう意味ではさらに輸出を伸ばすかもしれない。その恩恵を受ける人も少なくないということだ。
そうだとはいえ日本にしてみると、対立している米国のものより、協調しているものの方がはるかに多いのである。だから影響を受けて困ることにもなるのだが、一方でアメリカ協調が良い面も当然ある訳だ。例えばさらなるドル高は、関税を越えて日本に有利になる場合もあるかもしれない。アメリカの期待値のある株価の高騰は、他国経済も潤すかもしれない。北米に舵を切らざるを得ない国際企業の同調もあるということを考えると、日本を離れる企業の方が、多くなるかもしれないが。