俺物語/河合勇人監督
原作は少女漫画コメディ。まったく未読だが、登場人物の描き方は、それなりに漫画的な演出である。
主人公のもみあげの熱い武骨な男には、圧倒的に色男で女にモテまくる友人がいる。子供のころからの付き合いで、いつも一緒だ。しかし友人のモテぶりは凄まじく、学校中の女の注目の的であるようだ。そんな中ある女の子が不良に絡まれているところにもみあげ男が遭遇し、助けてやる。助けられた可愛い女は、もみあげに好意を抱くが、このもみあげ男はこれまでの長い経緯から、またしても友人イケメンにこの女が惚れてしまったものと勝手に思い込み、友人と上手くゆくようお世話を焼くようになるのだったが…。
気持ちの擦れ違いコメディは、これまでにも実にたくさんつくられてきたわけだが、それがそのまま少女漫画的にどこまでも(恐らく原作はもっとしつこいと思われる)本人達だけがすれ違っていく様を描いている。それを僕らは外からメタ視力的に見て、残念だったり焦ったりしながら二人を応援することになる。不釣り合いは当然だが、やはりお互いの気持ちというのが何より大切であるはずなのだ。そうしてこの物語は、割合その素直さが健全なまま保たれていることで物語の一定の気分が成り立っているという気がした。
たとえばイケメンの友人君だって、仄かに恋心をもっているはずである。それは純粋に自分に向けられた愛情では無いにせよ、出来れば意中の人としてこの子に振り向いて欲しいという感情があってもおかしく無かろう。そういう葛藤がありつつ、ギリギリ友情を選ぶとしたら、やはりそこに嫌悪感のようなおかしみや悲しさが生まれてくるだろう。誰も望まないことだが、誰かの恋愛の陰には、そのような残酷なダークさがつきまとうものである。だからこそ少女漫画が、同じテーマであっても何度も名作を量産できるのだろうと思う。単純さの中にあって、水戸黄門には無い複雑なものが、恋の行方の物語なのではないだろうか。