カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

絵の値段をちょっとだけ考える

2016-03-07 | 境界線

 モノの値段というのは、時々なんだかとても不思議に思える。その代表的なものに絵画の値段というのがある。知らないんだから不思議も何もないが、絵には歴然と値段がある。いや、あるように見える。あるんだがあるように見えるという感覚が、そもそも不思議だ。売買されるから値段はある。しかし僕はそもそも買わないし、正確にいうと、その値段の正当性というようなものが、分からない、ということの意味かもしれない。
 出版される画集のようなものなら、買ってもいいと思うし、実際に買うこともある。しかし絵として額縁に飾られているようなものだと、ちょっと抵抗がある。もちろん値段が高いというのがあるし、買って飾るという行為に、かなりの抵抗があるという感じかもしれない。いただいたものならいいが(これも厳密にはいいとは言えない感覚はあるが、とりあえずは脱線するので無視しておく)、自分で買うのがどうか。正当な値段の感覚を知らないのに買っていいものか。金持ちでもないのに買ってしまう自分がどうなのか。それが一番の抵抗感だろうか。でも複製の類なら買ってもいいな。本物なら買いたくない。
 絵が高いのは、画家で食っている人が少ないからではないかと思う。たくさん描いてたくさん売るような人がいれば、それでいいという問題でもなさそうだ。いや、似顔絵のような商売もあるから、そのような生き方をする人が居ない訳ではない。要するに絵を買うような、ちょっとパトロンのような存在が少ないからこそ、一部の画家は食っていけるのではないか。多くの人が売買に参加するようなマーケットになると、画家の数も増えるだろう。しかしながらそれでは金を持った人が、絵を買わなくなるような気もしないではない。そういうバランスの様なものに、やはり参加しづらいものを感じる。
 絵の値段は僕の感覚からは高いと思ったが、それは絵をかく側からすると必ずしも当てはまらないものがあるという話は聞いたことがある。絵をかく時間と値段を考えると、実は時給換算しても、かなり絵は安いということも言われる。また絵の世界というのはそれなりに複雑で、画廊のような絵を取り扱う業界があって、いわば絵の売買の値段のかなりの部分を、中抜きしてしまうという現実があるようだ。絵をかく画家が手にする金額は、だから今も昔もそんなに多いものではないということらしい。もちろん大家といわれる人ならともかく、画家で食っていると思われるような画家であったとしても、大部分の画家は、やはりそれほど食えてないということかもしれない。
 実際に歴史的に有名なゴッホであっても、生前には一枚も売れてないし、ゴッホの援助をした弟も、ゴッホの絵で食えたわけではない。絵を描いたり関わったりしていた人たちが死んだ後に、この絵を扱って売買した人々によって、その絵のために多くの金が動いただけのことである。それは、現代的には価値のあることかもしれないが、絵描きにとっては大変に不幸なことだ。それでも絵をかいてしまうような人が居るからこそ、こういうことはこれからも起こりうることである。
 つまり絵の値段というのは、実際にはその作品そのものが売買されているとはいえ、それを取り扱う手数料というか、営業の方に値段の価値がある可能性がある。金を払うからその値段であるということは言えるが、それは同時に他にも欲しい人が居て、たまたま同じ時間軸で、そういう思惑が重なったためとも考えられる。誰も欲しくなければ絵の値段なんてやはり無いも同じだ。欲しいと思わせられるような営業があってこそ、その絵の価値は変動していく。それは本来その絵がもっているはずの魅力であるはずだが、結局は共有してそのことを理解されなければ意味を持たない。それが値段のほとんどの意味なのだ。
 結局絵の値段というのは、きわめて人間的な欲求がもとになっている。しかし買う人にとっては、壁紙を選ぶように金を払ってもいいのである。そうであるならその壁紙との選択において、僕は選ばないだけのことなのである。答えは見えたが、やはりちょっと不思議は消えない。結局その気分にならない自分が謎だからだ。自分が殻に閉じこもっているだけのことなんだけれど、そういうことから自由になれない自分の境遇を呪うより無いのかもしれない。
 まあ、だからとって特に僕は不幸なわけでもない。それが僕と絵の距離の問題ということなんであろう。
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