カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

カーペット・ボミング

2012-04-16 | 境界線

 戦争犯罪として裁かれる問題に、無差別虐殺というのは大きいと思われる。しかしながら周知の通り、戦争犯罪というのは勝者の論理で敗者を裁くためのものであるために、この無差別虐殺問題は敗者の側の人間しか対象になっていないようにも感じられる。
 戦争だから無差別虐殺は、ある意味では当然だと考える人もあるかもしれない。人を殺す目的において戦争が行われているのであるから、当然と言えば当然かもしれない。しかしやはりその中にも秩序あってしかるべきでは、という議論もあるということなのだろう。
 戦闘員を殺してもいいが、民間人を殺すのはけしからん、という話がある。そのような残虐行為を行うのは、民族性があるのではないかという話もある。おもに日本はそのような国だから残虐行為を行ったということをいう人が、日本人の中にもいるようだ。残酷な民族性って、本当に証明できるものなのだろうか。僕なんかは暴力映画なんかを見ていると、偏見ながら肉食系という印象を受けるが、別に草食系が暴力的であっても何の不思議もないとは思う。
 さて、東京大空襲のドキュメンタリーを見たせいである。この空襲は米国でもカーペット・ボミング(絨毯爆撃)と言われていて、当初は軍事施設の爆撃計画だったが、無差別に発展したということは(暗に)認めている。もちろん大義名分は、戦争の早期終結につながるという考えのようで、そのための多くの人命の救出ができたと現在でも言い訳している。戦闘の長期化による人の命(もちろん米国人)を助けるために、大量の人の命を犠牲にすべきだという考えである。
 空襲で生き延びた人の証言に、最初は誤爆ではないかと思っていた様子があった。軍事施設なんてものは近所には見当たらないし、なんでこんな民家が焼けてしまったのだろうと考えるのは、ごく自然なものだろう。しかしながら執拗に空爆は繰り返され、東京の街は寒空の中瓦礫と廃墟の街に変貌していく。
 しかしながら、実は最初から軍事施設を爆撃するという考えでは無かったようである。米軍は日本家屋の街を砂漠に再現し、焼夷弾の油の配分を調整し、いかに効率的に日本の街を焼き尽くすことが出来るのかという詳細な実験を行っていた。焼き尽くすことが目的だから、乾燥して強い風の吹く季節を選び、空爆を実行した訳だ。もちろん建物の中に人が住んでいないとは想定しているはずはない。如何に効率的に大量に無差別に殺戮できるかということを計算し尽くして、絨毯爆撃を執拗に実行していたのである。
 もちろんこのような一連の攻撃が、戦争終結を早めたという議論は存在する。原爆においてもその衝撃は大きかったとはいえるだろう。もちろん米国はすべての日本人を焼き殺す本気度を示していたということだから、単に終わるまで実行を繰り返していたということだろう。
 情勢が決定的になったから、このような人体実験的な行為を行ったという議論もあるが、まあ、今回は止めておこう。どのみち認めることは無いだろうが、日本人が黄色人種だったことは事実なのから。
 戦後米国でも「きけわだつみのこえ」がベストセラーになったことがある。多くの米国人がこの本に興味を抱いて読んだのは、書いた日本人が実は米国人と同じ人間感情を持っていたことに驚いたためだと言われている。日本人は人間としては下等だから残忍な戦闘行為が可能(ハラキリや特高隊はそのように理解されていたようだ)なのであって、よって大量虐殺は正当だったと信じていた人たちには、少なからぬショックがあったということのようだ。
 日本でも鬼畜米英と言っていたのは、彼らは同じ人間では無いという意識が無いことには、やはり人間を殺す行為は難しいということを示しているものと思われる。そんなことを本気で信じるということではなく、気分としてそのような気持ちで行くということなのだろう。
 しかしながら、いまだに米国人の多くは、大空襲や原爆の無差別大虐殺の罪を認めてはいない。むしろ人命救出の功罪として称えているくらいのものである。それは戦争に勝ったものの特権という程度にしか、認識が無いのかもしれない。
 僕自身は吊るしあげを行いたい訳ではないのだが、そのような考えは、残念ながら次の虐殺の布石にしかならないことだという気がしてならないだけである。既に戦争犯罪としてあげられる人物などいない時代になりつつある。人類の愚行として、アウシュビッツと並びうる虐殺の歴史に数えられる日が、いつかは来ることを願うのみである。
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