チワワちゃん/二宮健監督
チワワちゃんが主人公じゃない、群像劇っぽいお話だけど、基本は嫉妬とか若い人の風俗の物語かもしれない。主人公はチワワちゃんじゃないつくりなんだけど、しかし結果的にはチワワちゃん演じる女優さんが一番素晴らしい作品かもしれない。少なくとも僕は、そんな感じでこの映画を観ていたように感じる。
好きな男がいて、しかしその男は別の女をナンパしてディスコ(クラブっていうのか?)に連れてきた。その子の名前がチワワちゃん。それで何となくそのこが、自分たちの仲間のようなことになる。嫉妬心があるのだが、同時にモデルなんかもしている自分に憧れもして、懐いてくるチワワちゃん。チワワちゃんは胸も大きくスタイルがいいが、あまり中身の無いような女の子で、いつも明るい。ある時、店に来た客が600万円持っていることを知り、盗んでしまう。それは政治献金に使われるはずの金で、要するに表に出てはならないものだったようで、皆はそれで豪遊する。そういう、楽しいがなんだか浮遊感のある、現実味の追いつかない日々の中にチワワちゃんとの付き合いがあり、そうして実はチワワちゃんは、何者かに殺されてバラバラにされて見つかる。犯人は見つからない。騒動になるが、実のところチワワちゃんの本当の姿は、仲間たちは何も知らないも同然だったことを知るのである。
原作は岡崎京子の漫画らしく、どの程度それに忠実なのかわからないけれど、ちょっとしたタガの外れ方の異常さのある作品になっている。面白いというか、奇妙なものを見ている浮遊感が伝わってくる。お金を取る場面だけは、誰か一人でも捕まればお終いじゃないかという嘘っぽさがあったけれど、実際そういう事と関連してチワワちゃんは殺されたのかもしれないけれど、結局犯人は見つかりそうもない。好きな男は、かっこいいだけで実際は中身は無いし、若いだけでうまく行かない自分たちの青春像が見事に描かれている、という感じだろうか。日本映画なので科白と音楽の音量が違いすぎて、落ち着いて映画を観られないという難点があるのだが、なんとか見通して、しかし何だったのかは、やはりよく分からないのだった。そういう映画なんだということだけど。
しかしやっぱりチワワちゃんには、何か奇妙な悲しみが詰まっている。中身が無いような女というものを、好きか嫌いかは別にして、そういう風に生きざるを得ない可愛い女を、彼女自身が演じるように生きていた、ということなのではなかろうか。多かれ少なかれ、楽しそうに生きていくには、若い女としてそういうものがある、ということなのだろうか。僕にはわかり得ないが、そういうものが青春の正体なのかもしれない。