長ぐつをはいたネコと9つの命/ジョエル・クロフォード監督
何かよく分からないが、大宴会というかコンサートのようなことをして大騒ぎをやっていることで巨人を目覚めさせてしまい、さらに混乱を深める中、なんとか巨人を退治することができるが、自らは死んでしまった猫の英雄がいた。しかしながらこの猫は、実は9つの命が授けられていて、これまでに8つが亡くなったということであるらしかった。最後の命を大切にして、余生は猫好きのおばさんに飼ってもらうよう医者から諭されるのだが、何しろ無頼派で鳴らした剣士である。ところが恐ろしいオオカミの姿をした死神のような賞金稼ぎに襲われ、とても力の差があることもあり、恐ろしくなってなんとか逃げ出して難を逃れる。すっかり気落ちして猫好きおばさんに、その他大勢の猫たち共に共同で飼われてみることにしたのだったが……。
子供の頃に長靴をはいた猫というのは、物語として知っていたが、それの派生らしい造形があるものの、別の猫のようである。ただし民衆をはじめ、なんとなく舞台はフランスっぽい。演出は完全にアメリカ的なんだが。ともあれアニメらしい激しい展開と、さまざまな世界観が展開されていて、目まぐるしい中にも、漫画的なギャグやアクションが繰り広げられていて、楽しい作品になっている。敵も多いのだが、それぞれキャラクターがはっきりと描かれていて、何か敵っぽいけど仲間であることも示唆されている。やっつけるべき強大な悪のようなものに立ち向かいながらも、いわゆる残酷さというものはあくまで危機的な状況のみで、大団円に向かい安心して観られる構成になっているようだ。ちょっとそれはなんでだろうという疑問が無いでは無かったが(特に死神に対しては)、まあ、平和が一番である。海外アニメなんだし仕方がなかろう。
いちおう恋愛劇もあるし、なんとなくの大人テイストも無いでは無いが、あちらのアニメにありがちの子供向け倫理観のようなものがあって、やはり西洋人は、殻から抜け出すのが困難な精神性があるのが見て取れる。自ら限界を超えることができないようだ。そういうものは宗教なのか文化なのか、それともその両方なのかわからないが、共同体として抗いがたいものがあるのかもしれない。特にアニメのように、子供にふさわしい大人の考えというのが確固たるものとしてあるというのが、東洋とは違う価値観なのだろう。子供も大人の所有物、ということなのかもしれない。