カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

人間性はどんどん険悪になり得る   神は見返りを求める

2024-09-07 | 映画

神は見返りを求める/吉田恵輔監督

 合コンで知り合ったゆりちゃんはユーチューバーだが、今一つ低迷していた。イベント会社に勤める田母神さんは、非常に人のいい人で、ゆりちゃんを無償でサポートし、なんとか少しでも成功するように、アドバイスしたり画面のデザインを工夫したりしてくれていた。それでまあ、少しくらいは浮上した感じにはなっていたが、田母神さんが忙しいときに初歩的なネット上の情報の扱いにミスし、ゆりちゃんはこれではいけないと思い、人気ユーチューバーと知り合い、コラボしてさらに体を張った映像をとるようになり、事実上バズる。新しく映像をプロデュースしてくれるセンスのいい人とも知り合い、田母神さんと距離をとるようになってしまう。田母神さんはすっかり裏切られた感じになり、仕事もうまく行かなくなり、ゆりちゃんに逆恨みの感情がふつふつと湧いてきて、ゆりちゃんを冒涜するユーチューブ映像を発信するようになり、猛烈に嫌な奴になってしまうのだったが……。
 最初からなんとなく痛い二人なのだが、それなりにうまく行くところはあって、それはそれで楽しいひと時を過ごしていたのだった。ゆりちゃんは素直に田母神さんに感謝していたし、本当に頼り切っていた。田母神さんはそんなゆりちゃんに、最初は親切心だったが、おそらくだが徐々に恋心を抱いていた。しかしそもそも田母神さんはあまり要領がいい方ではなく、センスもいわゆるダサいのだった。ゆりちゃんもそこそこかわいいのだが、自頭がいい方でなく、滑りがちだった。よく分かんないが、自分の発するエロの部分が安く売られて、バズっていることには満足があったが、しかし同時にそんな自分にも嫌気がさすところがあるのである。田母神さんとの関係が崩れ、成功する自分とのコントラストに、うまく酔いしれないとこがあるのだけれど、田母神さんははっきり言って狂っており、手が付けられなくなっていく。映画的にはかなりホラー状態に陥ってしまうのだった。
 この人間的に嫌な感じというのを、なかなかストレートに展開した作品なのではなかろうか。それに題材もそうなのだが、やはり現代的である。要するに一般の人も簡単に陥りやすい人間関係を描いているともいえる。僕はゆりちゃんの体を張った危うさに、最初は狂気の芽を感じていたのだが、やっぱり人間関係を上手く築けないのは田母神さんの方であり、ゆりちゃんはある意味で犠牲者なのかもしれないとも感じた。十分すぎる苦しみも、同時に受けているようにも見えるわけだし……。二人とも嫌な人間に成り下がってしまったとは、言えることではあるのだが。
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