カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

人の命は利権より軽い   エリート・スクワッド~ブラジル特殊部隊BOPE

2024-09-05 | 映画

エリート・スクワッド~ブラジル特殊部隊BOPE/ジョゼ・パヂーリャ監督

 ブラジルの大都会(リオとか)では、麻薬などを売りさばく犯罪組織と、それを取り締まる警察との癒着が強く、さらにそれらをもっと強い権力で取り締まるための軍隊のような組織が存在するようだ(県警と警視庁、もしくはCIAとFBIみたいな違いか、それ以上)。とにかくそれらの犯罪を取り締まるための組織が、それらの犯罪の温床になっているという背景自体が、ちょっと日本の我々の感覚とはかけ離れすぎている。パチンコ業界と警察の癒着があったとしても、それで我々の私生活が脅かされるということは考えにくいが、麻薬と警察では、単に悪の組織同士のつながりというよりも、一般市民の私生活にも入り込んでいる複雑なものがあるようなのだ。やはりあちらでの麻薬というのは、日本のそれとまったく違った生活に根付いた社会問題なのかもしれない。また映画では、それらの背景に政治家もかかわっていて、要するに社会システムそのものに根深くはびこっている悪の連携なのである。
 マフィア以外の多くの人が、それぞれ利権のために殺される。マフィアも都合が悪くなると、簡単に殺される。彼らも武装しているが、警察に助けを求める。それは仲間だから。しかし警察を仕切るさらに上のシステムがあって、場合によっては助けてくれない。そういう正義をしっかりさせたい主人公たちの戦いもあるが、仲間にも利権にかかわる人がいて、簡単に裏切られてしまう。そうして家族にも犠牲が出てしまって、やっと本気になるのだったが……。
 もちろん映画のはずである。そう思うのだが、以前のアメリカ映画にも、犯罪と癒着する警察を描くものは多かった。犯罪を取り締まる方がみかじめ料をとるようになると、それは彼らとしても商売をしやすくなる。警察だってその範囲内で悪さをしてくれるぶんには、それはそれでいいという事なのだろう。さらにそれが選挙のための資金に流れるとなると、政治家だって頑張って仕事をするかもしれない。まあ、社会というのはそういうものだという諦めなのだろうか。
 妙な映画で、人がたくさん死ぬので、なんとなく麻痺してしまうところがある。正義の側も暴力を簡単に振るうので、それで本当にいいのかかなり疑問だ。良い方と言っても、そんな解決の仕方をできると考えているからこそ、いつまでも何も変わらないのだ。制作側もそれがちゃんとわかっていない。それはそういう社会の中に、彼らも浸かっている可能性が有るからではないだろうか。実に恐ろしい事ではあるが……。
 ブラジル社会だからありうる、という前提が無いと、とても成り立たない社会観である。でもまあ、実際はこんなことないと思うけどね。知らんけど。
コメント
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