カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

卒業でナーバスになる人々   少女は卒業しない

2024-09-13 | 映画

少女は卒業しない/中川駿監督

 高校卒業式までの2日間の出来事を、群像劇にしてある。一つは答辞を読むことになった女生徒の話で、生徒会でもないのに答辞を務めることを(すでに進路が早々に決まった子らしい)先生にすすめられる。それでその気にはなった訳だが、何か彼女には秘密がある。毎日彼氏に弁当をつくってやっている様子が描かれていて、料理クラブの活動のようなものをしていたようだ。もう一つは東京の大学で学びたい思いが強く、地元の大学に進学すると決めている彼氏とギクシャクしてしまっている。卒業後は進路が違うので、長い別れにはなるが、こういう形で関係がおかしくなったままでいるのは心残りだ。せめて別れる前に、仲直りしておきたいと考えている女生徒の話。卒業式の後に恒例となっている生徒会主催のバンド演奏会が催されるらしい。そこでの出演順は投票制になっていて、口パクのなんちゃってパンクバンドが人気投票で一番になってしまう。要するに本当には実力が劣るバンドが、何かの冗談のような投票結果の末に(そのような悪意のあるような組織票が働いたと示唆されている)、本当にトリを務めていいものか、という話。最後に、学校に慣れずに友人もいないが、図書館に詰めている先生が好きでなんとか学校に通うことができた女生徒の話。という4人分である。
 卒業前にナーバスになっている人たち、ということが言える。さらに卒業後にこの校舎は取り壊されることが決まっており、多くの備品は既に新校舎に引っ越し準備が進んでいる。いわば慣れ親しんだ校舎が無くなることは、地元に居続ける人と地元を離れる人とに、微妙な分断を生む背景ともなっている。しばらく離れた後に帰って来る懐かしいところが無くなることと、生活の中で新しく生かされる旧校舎後に期待する地元民との感覚の違い、というのだろうか……。
 高校生の感覚なんてものは遥か彼方の昔のことで、とても思い出すことなどできないが、卒業後友人と遠く離れてしまう寂しさを感じないものなどいないだろうし、新たな進路に胸を躍らせない(または一抹の不安も)ものもいないだろう。心残りもあるが、清々する気分もあるかもしれない。中心は女生徒を据えてあるので僕には分からないだけのことかもしれないが、皆考え方がちょっとした大人のようなもの分かりの良いものばかりで、なんだか不思議かな、とも感じた。対して男たちは、やはり幼いという事か。もっとも原作は男性のようだし、これも一種の幻想なのではなかろうか。
 映画とは関係が無いが、高校時代に戻りたいなんて言う感慨は抱いたことが無い。たいして面白くない時代だったこともそうかもしれないが、閉塞感が大きくて、早く自由になりたかったというのがあるからかもしれない。先生も大変だったろうけど、生徒でいることはもっと大変だったのである。卒業後に自由になって却って戸惑うというのは無いでもないが、その後社会人になって、自分で収入を得ることになって、もっと自由になっていく。やっぱり子供時代より大人の方がいいのである。彼ら彼女らには、そういうことをわかって欲しいものである。もうすぐわかることにはなるんだろうけれど……。
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