カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

タブーから目をそらさない映画   オアシス

2020-02-15 | 映画

オアシス/イ・チャンドン監督

 ひき逃げなどの罪(前科三犯であるようだ)で服役後出所した男は、家族からは歓迎されていない。自己中心的というか、おそらくだが、発達障害があるのではないか。そういうわけで疎まれているわけだが、ひき逃げの犠牲者宅にお見舞いに行き、ここでも追い返される。そこにいた脳性麻痺の女性が気になった様子で、花を届けに行ったときに家の鍵のありかを知る。それで忍び込んで、結果的に襲おうとするが、激しく抵抗された上に、麻痺の症状のためか女性は気を失ってしまう。驚いて水をかけて意識を戻させたが、怖くなって退散してしまう。しかしこれがきっかけとなったのか、二人は恋に落ちていくのだった。
 明石家さんまががっしりしたような男の行動は,終始妙である。しかし、それが彼の純粋さであることは、だんだんと見て取れるようになる。実際は彼を利用しながら理解できない家族に対する反抗や、結果的に罪を犯し続けているように見える彼を変態としか見ることができない警察などの関係者に対して、ささやかながら抵抗しているに過ぎないようだ。
 脳性麻痺役の女性は、演技であることは見て取れる。途中、演出的にそのことでファンタジー表現もある。そういうところが、映画的にもなかなかの力量である。それはミュージカル的でありながら、この映画のリアルさを損なわせてはいない。
 そうなのだが、ちょっとだけ批判的にみるのなら、二人は困難ながらも言語でもってコミュニケーションをしており、時間がかかっても女性の側の弁護は可能だったのではなかろうか。まあ、それを言っちゃおしまいなんだろうけど。
 もう少し短くできる映画だとは思うが、ショッキングな感動作であることは間違いない。そうして野心的である。これは世界的に、ずっと期待され続ける監督になったということであろう。
コメント
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