響HIBIKI/月川翔監督
原作漫画があるようだ。それも漫画大賞受賞作である。それで映画化されたのかもしれない。15歳の天才文学少女が現れ、芥川賞と直木賞のダブル候補作となり話題となる。同時に同じく15歳の人気作家の娘も同級生で文学作品が売れていた。一方で何度も候補作を書きながら受賞に至らない屈折した労働者作家や、落ちぶれた過去の才能作家や、様々な出版事情と絡まって、業界がてんやわんやの騒ぎとなるのだった。
基本的には、天才少女が身勝手に暴力をはたらいて周りを困らせる物語である。作家としては天才という肩書で、本人は少し頭が足りないか、もしくは素直にバカである。そういうことを爽快に描いているということのようだけれど、単に身勝手に暴力をふるってでしか物事を解決しようとしかしない、ヤクザな感じである。本を読んではいるが、だからと言って努力はしない。親も放任のようだし、何らかの構造的な問題を内包している特殊な人たちなのかもしれない。
文学賞というのがあって、一定の評価基準になっていると考えられはするが、どの賞だから権威があるというのは文化的なものであって、本当の優劣であるとかないとかいうこととは、やはりどこか別の割り切り方が必要だろうと思われる。漫画なのに権威には弱く、社会的な暴力には寛容というスタイルをとっているので、なんだかわけが分からない話になってしまっている。結果的に(彼女が)計算していた通りに収まるので、ものすごく運のよい少女の物語なのかな、という印象は受けたが…。
賞をめぐる人間模様として、親の七光りだったり、苦労話だったり、才能の枯れ具合だったり、そのまま勢いの問題だったりすることを、サイコパスの目から俯瞰している世界があるということのようだ。エンタティメントとしてそういう描き方があるということだろうが、だからと言って深みが感じられるわけではなく、おそらく漫画で成功したように上手く行っているとは限らない。むしろステレオタイプすぎて、いったい何をしたくて暴れているのか、結局訳の分からない展開になってしまっていた。暴力的だから強いというのも違う気がするし、だから社会的に抹殺されるべきだとも思わないが、だからこそ頭は使うべきなのではなかろうか。やはり奇をてらった芸人作品なんであろう。