カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

刺青より前に気づけよ   はやぶさ奉行

2018-01-30 | 映画

はやぶさ奉行/深田金之助監督

 片岡千恵蔵主演の遠山の金さんシリーズの12作目らしい。たまたま録画していたものをぼんやりと観る。ずいぶん型にはまった演技だなというのと、女優さんたちがたいしてきれいでもない。昔の芸能の世界は、今のような競争があまりなかったのだろうか、などと考えてしまった。いや、何かの基準が今とは違うのかもしれない。もちろん僕の感性も含めて。
 見世物小屋で殺人が起こり、通り魔殺人なんかも立て続けに起こる。どうも大工が殺されているらしい。日光で職人を集めて何かを作っているところに金さんが職人のふりをして忍び込み、探りを入れようとするのだったが…。
 見世物小屋の見世物が巨大水槽で女が泳ぐアトラクションだったり、巨大な時計仕掛けで将軍を殺そうとしたり、やっていることはハリウッドのB級映画のような現代的なものである。片岡千恵蔵は芝居小屋の旅芸人のような大げさな演技で、科白回しもわざとらしい。歌舞伎を多少くだけてやっているという感じだろうか。とにかく大勢が死ぬのだけれど、血しぶきが激しく飛ぶ訳では無いし、舞台の上で人々が舞っているような感じである。そういうものだと言われればそうだろうけれど、やっぱり昔の映画なのかもしれない。久しぶりに観ると、そういうところも面白いとは思うけれど。
 遠山の金さんは子供の頃からテレビではおなじみだった。古い記憶では中村梅之助もあるが、基本的には杉良太郎が長かったようにも思う。ワンパターンだから子供にとっては飽きてしまうたわいもない話ばかりで、大人を馬鹿にする材料として見ることもあったかもしれない。何しろ街中で金さんとして馴染んでいた男が、奉行所で面を上げると座っている。それでも悪党は気付かず、もろ肌を出して刺青を見せると驚いて同じ人物と分かるような連中が、とても滑稽なのだった。まあ、そういう話なんだけどさ。みんな馬鹿でどうかしてるよ。
 僕もそれなりの昔の人間だが、こういう芝居でカタルシスがあるというのはよく分からない。皆金さんの活躍で溜飲を下げるというのがあるんだろうけど、大人になるまでそういうものだというのは、僕にはよく分からなかった。いまだに基本的には分かっていないのかもしれないが、何か世の中に恨みの多い人生を送ると、金さんのような人を欲するという心情が生まれるのだろうか。昔の日本人はミステリーである。
コメント
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