響け!ユーフォニアム/石原立也監督
副題に「北宇治高校吹奏楽部へようこそ」とある。さらに劇場版、とも断ってある。要するにテレビアニメとして放映された作品のダイジェスト的なつくりでもあるのかもしれない。
久美子は中学の頃にも吹奏楽部にいたが、同校からの進学者が少なく何か気持ちをリセットするような気分と制服が好みであることから、北宇治高校へ進学する。そこの吹奏楽部のレベルは、全国レベルからすると今一つ。入部するかどうかさえあいまいな気持ちでいたが、なんとなく流れで入部した。しかし、一緒に入部した仲間には、中学時代も同じだった、トランペットの麗奈がいた。最初はコンテストに対してもそれほど前向きで無く、演奏にも自信のない吹奏楽部の部員たちだったが、滝先生という不思議な説得力のある、しかも厳しい指導もあって、それぞれが本気で実力を上げて、全国大会を目指すようになっていくのだった。
部活としての吹奏楽部内においてのヒエラルキー。音楽に対する個人の向き合い方。学年によって、部活への思い入れの違い。恋愛少し。人間が本気で何かに打ち込むということ。そうして様々な思いが一つになるということ。それらのエピソードが、見事に描かれていると思う。日本の部活にありがちな全体主義ではなく、個人が切磋琢磨しながら、それでも根本的には自分というものをいかに磨いていくかということを、音楽を通じて理解できるようにしている。今までのスポ根ものにあった単純さではなく、何か心の中のどろどろしたようなものも含めて、青春だったり音楽だったりするということのように思える。はっきり言ってなかなか素晴らしい演出ではないか。まあ、漫画の絵的には、ちょっと男性視点が多すぎるように感じはするけど。
しかしまあ、個人的には、僕は学校が嫌いだったなあ、ということは思い出した。部活がどうだというより、誰かをどうしたいというような妙な友情や、さらに噂話や妬みというのがいつまでも尾を引く。実社会だっておんなじようなものだとは思うが、少なくとも学校社会のようには、めんどくさく無くなった。ひとの噂にしても、聞かなければ聞こえてこない。皆大人になれば学校に戻る必要も無いのだろうが、これは本当に幸福なことだな、と思う。もちろん学校が好きな人は行けばいいだけのことである。道が分かれるというのは、人間に必要な生き方なんだろうな、と改めて思います。