猶も思ひは増鏡

2016-07-01 | 読書
 知人からの案内で、今度、能「葵上」を観る。
 それで、読み直した。
 源氏物語にある六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)の生霊が、葵上を苦しめるという話である。
 六条御息所は、光源氏の早い時期の恋人。
 光源氏は、彼女の気位の高さに嫌気をさし、逢瀬も避けるようになったという。
 葵上は、光源氏の最初の正妻だが、相性はよくなかったようである。
 六条御息所の生霊が、葵上に祟った直接の因は、賀茂祭の折の車争い。
 見物の場所争いで、葵上が、その権勢をバックに、六条御息所の牛車を壊して、恥をかかせたというものである。
 ここらの話は、謡曲「葵上」にあるわけでなく、当然知っていることとしている。
 以下、六条御息所の語るところ。
 「昨日の花は今日の夢と、驚かぬこそ愚かなれ」
 「月に戯れ色香に染み、華やかなりし身なれども、衰へぬれば槿の、日影待つ間の有様なり」
 「かかる恨みを晴らさんとて、これまで現れ出でたるなり」
 「あら恨めしや」
 「思ひ知れ」
 「夢にだにかへらぬものを我契、昔語になりぬれば、猶も思ひは増鏡、其面影も恥かしや。枕に立てる破車、打ち乗せ隠れ行かうよ、打ち乗せ隠れ行かうよ」

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