“鏡”

2024-04-26 | 読書

 J.L.ボルヘスの詩集「創造者」(鼓直訳/岩波文庫)を読んだ。
 詩集を一冊、まるごと読むと言うことは、私にとってはめずらしいことだ。
 読んだと書いたが、字面を追って目を通したと言った方がいい。
 なにしろ、ほとんど意味がとれないという感じだ。
 訳の行替えが、詩らしい体裁のためか、意味をとりにくくしている。
 それに、題材となっている史実の概要を知らないと、理解できないものが多いようだ。
 そういう事どもをボルヘスがどのように捉えているかが記述されていると言っていいのだろうか。
 図書館、虎、夢、鏡という単語がよく出てくる。
 ボルヘスが、様々な事どもを捉えて、表現するのに使われる単語である。
 イエス・キリストのことが書かれた詩があり、そこだけは、読み返すこともあるかと、ページ端を折り曲げておいた。
 詩集のおしまいあたりに「詩法」と言う題の詩がある。
 その一節。
    ときおり夕暮れに、一つの影が
    鏡の奥からわたしたちを凝視する。
    芸術は自分の顔をわたしたちに教える
    あの鏡のようなものにちがいない。
 これなどは、次のようなことだろうか。
  夕暮れどきには、怪しい気持ちになることがある。
  鏡を見ていると、その奥から何者かが、自分を見つめているのを感じることがある。
  鏡は、わたしたちに何かを告げる。
    「芸術」なるものは、自分が何者であるかを教えてくれる鏡のようなものなのだろう。
 訳を見ての勝手な書き直しなので、間違っているかもしれない。
 ただ、たいしたことは言っていないように感じる。