「御伽草子」の「さいき」を読んだ。
豊前に住む佐伯と言う男が二人の女性に捨てられる話。
女性の一人は、京の美女で、男は京にのぼった折に、みそめて「かやうの人と一夜の枕をならぶるよしもがな」と思う。声をかけ、「いい仲」となり、女性も男を好きになる。
その後、男は、豊前に帰ることになる。別れがたき思いがつのった女性に、「御迎ひに上せ候べし」と応じる。
故郷に帰った男は、迎えを出さず、その女性をほったらかしにする。
国の女房は、京の女性の思いを知って、とんでもない不得心の夫と、京の女性を招くことにする。
国の女房は、「かほど不得心なる男を頼みしわれこそあさましけれ」と髪剃り落とし出家する。京の女性の思いに心を寄せ、不誠実な夫を嫌い、切り捨てる。女同士のトラブルに発展することがないのが、この話のひとつの特色か。
京から豊前に来た女性は、この経緯を知り、国の女房に心を添わせ、「かやうにやさしき人を、いかでか一人置くべきぞ」と髪を切る。そして、同じ庵に入る。男は、二人の女性に愛想を尽かされる。
やがて、男も出家。清水の観音の御方便で、三人とも救われるという顛末。
京の女は、どうして、そんな男に思いを寄せることになったのか。見きわめられなかったのか。
国の女は、どうして、京の女に嫉妬し、嫌いにならなかったのか。
なんだか、「どうして」と思わせる話である。