梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

道なき道(その3)

2020年07月11日 05時06分49秒 | Weblog
道なき道を求め、私たちは大井川の支流を遡行し南アルプスにある荒川三山を目指しました。アクシデントはありましたが、無事下山することが出来ました。半世紀前の話しです。今、登山者にとってみるとその聖地が大きく変えられようとしています。

一週間程前のこと、リニア中央新幹線を巡るJR東海と静岡県のトップ会談が、平行線に終わりました。JR東海側が静岡工区の準備工事再開への理解を訴えたのに対し、静岡県側は環境への影響を理由にはねつけたのです。6月中に再開出来なかったことで、2027年の開業は困難となります。リニアは最高時速500キロで、品川-名古屋間を40分で結ぶ、総工費9兆円に及ぶ巨大事業です。

JR側が求める準備工事は、作業基地のトンネル入り口周辺の整備や森林伐採などを対象としています。県側が工事再開を認めない理由は、再開を求める準備工事は本体工事にあたるトンネル掘削工事の一部であり、掘削による大井川の流量減少問題が解決されていないとの主張です。(その後、国土交通省が両者に仲介案を提示しています)

その作業基地のトンネル入り口とは、椹島(さわらじま)付近のことです。私たちがかつて奥西河内に取りつく際に、チャーターしたバン車から降りた、山深く人の気配を感じさせないその場所です。そこは今でも南アルプス最深部の登山基地です。ネットで調べてみると、椹島地域は既に人が入り開発が進んでいる様子で、本格的に工事が再開されれば昔の風景は一変するでしょう。

そして計画されているリニアトンネル本体のほぼ直上にあたるのが、荒川三山とのことです。私たちがかつて苦戦した悪沢岳の下に、現代の技術の粋を集めたリニア新幹線が通るのです。しかし南アルプスは地質構造が複雑のようで、多くの人々が利用する大井川水系の源流でもあります。トンネル工事は水資源や自然環境へ深刻な影響を与える恐れがあります。

『道なき道』のテーマで書き出したのは、実は切っ掛けがありました。(その1~2)で書いてきたように私が大学二年20歳の時こと、そのプランに一緒に参加していた同期のKさんの存在です。そのKさんとは大学を卒業して以来、一度も再会することがなかったのですが、一ヵ月前にその彼と45年ぶりの再会をしてみようと決心したからです。

私たちの同期は15名程いました。程とは、四年になる前に退部してしまったり、卒業後に音信不通になったりした人がいるからです。しかし私は、四年間一緒に活動していなくても、山の想いを共有出来るかけがいのない仲間だと思ってきました。社会人になっても東京界隈在住の同期とは、折にふれ集まってきました。

Kさんは、卒業後直ぐに関西勤務となりました。彼は元来大勢でわいわいがやがやするタイプではなく、一時期体調を崩したこともあり、同期とは疎遠になってしまいました。現役時代は彼も沢登り志向で、私とは相性が合いました。年賀状を欠かさず交わしてこれたのも、同じ体験を分かち合っているからだと思います。

先週(その2)を書いている最中、48年前Kさんと行った山々が、世間でも話題になりました。前述のリニア問題です。リニア開業について私は反対ではありませんが、山々の生態系を変え、大自然が破壊される心配が残ります。

Kさんに限らず同期の仲間は、私の人生の底辺になっていることは確かです。その仲間といまだに逢えることも、この上ない楽しみです。一ヵ月前にKさんと45年ぶりの再会をしてみたいと思った経緯を、そして再会が出来たかどうか、(その4)の紙面に譲ることにします。   ~次回の続く~

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