梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

介護職研修と介護崩壊!?(その7)

2024年05月04日 06時21分02秒 | Weblog
今回も、崩壊しない介護に向けて介護職不足の打開策はあるのかのテーマです。雑誌『介護異次元崩壊』の中で、「大規模化と収益増を図る投資ファンド、ファンド主導で介護業界の経営改革が進む」との記事がありました。介護業界へのファンドの介入の是非はともかく、この経営改革は、外国人労働者と同様に介護者不足を解消する方策になると、私は捉えます。何故なら、介護職員を減らせる人員配置基準を、緩和する動きに繋がるからです。順を追って説明します。

雑誌では、構造改革に取り組むニチイ(売上高2689億円)の事例が紹介されていました。労働集約型で合理化が難しいとされてきた介護業界に、ICT(情報通信技術:情報のデジタル管理)を取り入れ、目指したのは介護スタッフが介護に専念できる体制。欧米系ファンドベインの下で、書類など紙文化も廃し独自のアプリで業務効率化を図り、3年の構造改革の結果、営業利益は2倍になった。との内容でした。

さらに他企業の事例もあげ、ファンド主導などで中堅・大手の業界再編が起きていて、大規模化で業務の効率化の流れが加速しているとの指摘でした。経営が行き詰まるのは中小の事業所に多く見られる一方、大手はネガティブな介護職のイメージを刷新し、報酬も成果によるインセンティブも付与し、若手中心の正社員採用に成功している。他大手に共通しているのはICT導入等、やはり介護スタッフが介護に専念できる体制作りです。

中小ではICTの導入で生産性を上げようとする動きには反発も強い。しかし、介護職員1人が稼げる額に上限があるために低賃金となっているのも事実。介護施設では、入居者3人に対して1人の介護職員を配置することが義務づけられてきた。利用者1人が使える金額には上限があり、介護職員が稼ぐ額は、介護保険報酬の3人分にしかならない。この人員配置基準を緩和し1人の介護職員が4~5人を介護できるようになれば1人当たりの稼ぐ力が強まり低賃金構造から抜け出せる。以上も記事からの情報です。

今回の国の介護報酬改定で、人員配置基準を緩和するルールができました。それは2024年度からICTを導入するなど一定の条件を満たした施設には3.33対1に緩和されたことです。人員配置基準の見直しは、21年、内閣府規制改革推進会議でSOMPOケアが22年度中に人員配置を実質4.1対1にまで下げられるという目標を掲げたことで、動き出しました。緩和は拙速ではないかとの声もありますが、地道に介護の情報デジタル管理を進めていけば、早晩人員配置基準は4対1になると私は思います。

つまり介護施設内での(訪問介護ではない)人員配置基準の緩和で、職員1人に利用者3人だったものが、職員1人で利用者4人を看れることになるのです。その分だけ、介護職不足が解消されることになります。介護業界の職員は、2021年度の215万人に比べ、40年度は70万人近い人手不足が想定されています。25年には800万人の団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となることが背景としてあります。人員配置基準緩和は、この70万人の人出不足に、一役買うことは間違いないと考えます。

介護施設の中では、介護職員が直接介護と間接業務を行っているところがあります。直接介護とは利用者の介護に直接関わっている仕事で、間接業務とは介護に関係のない掃除や洗濯やゴミ捨てや配下膳などの仕事です。間接業務専任の人を採用することは人件費増ですが、間接業務を介護専門職から切り離すことになり、これも介護職の不足を解消する手段です。

先月の日経新聞に、『介護現場「ご近所」で支える』との見出しの記事が載りました。深刻化する介護現場の人手不足を穴埋めするため、外部の力を借りる動きが広がってきた。白羽の矢が立ったのは施設の「ご近所さん」で、食事の配膳やシーツ交換など資格・経験が不要の業務を手助けしている。アクティブシニアと呼ばれる元気な中高年層の新たな活躍の場としても一役買っている。活躍するのは有償ボランティア。との主旨です。

介護現場と外部人材をつなぐサービスを提供する会社もあるとのことです。施設職員の業務を細分化し、資格や経験を必要としないものを切り出して募集をかける。全国約500事業所が利用し、業務は清掃や季節行事の飾りつけ、レクレーションなど70種類に及ぶ。一方、手伝いたい人は事前に助っ人として登録し、仕事を選ぶ。今年4月時点で5千人超が登録し、7割は未経験者。報酬は施設側が決め、1回当たり数百~数千円程度。

この会社の代表曰く、「既存人材の奪い合いではなく、支え手を増やすことで人手不足を解消したい」。導入施設への費用補助をする町村もあり、連携する自治体は拡大の見通しとのこと。アクティブシニアは、いまや不足する介護職を支える有力なワーカーになっているのです。   ~次回に続く~
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