風が立ち、浪が騒ぎ、
無限の前に腕を振る。
その間、小さな紅の花が見えはするが、
それもやがては潰れてしまふ。
風が立ち、浪が騒ぎ、
無限のまへに腕を振る。
もう永遠に帰らないことを思つて
酷白な嘆息するのも幾たびであらう……
私の青春はもはや堅い血管となり、
その中を曼珠沙華と夕陽とがゆきすぎる。
これがどうならうと、あれがどうならうと、
そんなことはどうでもいいのだ。
これがどういふことであらうと、それがどういふことであらうと、
そんなことはなほさらどうだつていいのだ。
人には自恃があればよい!
その余はすべてなるまゝだ……
(中原中也「盲目の秋」より)
無限の前に腕を振る。
その間、小さな紅の花が見えはするが、
それもやがては潰れてしまふ。
風が立ち、浪が騒ぎ、
無限のまへに腕を振る。
もう永遠に帰らないことを思つて
酷白な嘆息するのも幾たびであらう……
私の青春はもはや堅い血管となり、
その中を曼珠沙華と夕陽とがゆきすぎる。
これがどうならうと、あれがどうならうと、
そんなことはどうでもいいのだ。
これがどういふことであらうと、それがどういふことであらうと、
そんなことはなほさらどうだつていいのだ。
人には自恃があればよい!
その余はすべてなるまゝだ……
(中原中也「盲目の秋」より)